虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
聖獣祭前篇 その01
獣人国アニスト
「──聖獣祭、ですか?」
「そう。前に大森林に入ってもらったが、アレの理由だな。ようやく安全も確認できたことだし、開こうってんで呼ぶことにした」
アイプスルで暇を潰していた俺に、突然連絡が届いた。
招待したいということだったので、さっそく訪れてみた結果がこれである。
玉座の間にて、【獣王】がここに俺を招いた経緯を語ってくれていた。
……ちなみに夫の『覇獸』は、お仕事で強制的に連れ去られている。
「なるほど、前回言い含んでいたのはこのことでしたか」
「まあ、そうなる。本格的な準備を始めていたんだが、どうせなら始まる寸前に呼んで盛大に遊んでもらいたかったからな」
「……私は商人ですので。呼ぶのであれば、そちら側としての方が利があったと思われるのですが?」
「ハッ、そんなこと知らん。お前は俺たちにとって歓迎すべき賓客。わざわざ働かせるようじゃ、聖獣様だけじゃなく獣神様にまで叱られるだろ」
そう語る【獣王】に、そういえば獣神様の加護を貰っていたな……とふと思う。
バレたら面倒臭そうなので言わないが、祭りに影響が出なきゃいいけど。
「分かりました、参加しましょう。ですが、来賓としての扱いは結構です。私はただの普人族の商人として、自分のやりたいことをやりたいのです」
「……まっ、別にいいさ。これはアイツが勝手に提案したことで、俺は別にどっちでもいいって思ってたからな。お前が好きなようにすればいい」
「ありがとうございます。必ずや、祭りに参加する皆さんが楽しめる屋台でも開いてみるとしましょう」
「おおっ、そりゃあいいな。あとでうちの子たちといっしょに行ってやるよ」
鴛鴦夫婦な【獣王】と『覇獸』は、俺が知る【野生王】のヤー以外にもたくさんの子供が居る……そういえば、娘を押し付けられそうになったこともあったな。
まあ、俺には愛する子供と奥さんがいるのでお断りだけども。
……カエンとか『SEBAS』への許容っぷりからすると、養子なら許されそうだが。
◆ □ ◆ □ ◆
そんなこんなで、祭りが幕を開く。
いつものように屋台を設営して、サポートドールと共に営業を始める。
「さぁ、ここにありますのは力量を数値化できる『ダメージカウンター』! 皆さんの持つ一撃、もしくは連撃がどれだけの力を発揮するのか試してみるのはいかがですか!?」
サンドバックの中に、『プログレス』の能力をインストールした魔道具を並べていた。
普通に食べ物を売るでも良かったのだが、やはり彼らならこっちの方が来るだろう。
「ハッキリ言いましょう。今回、皆さんの力量が知りたいだけですので、測定量などはご不要です! そして、今回の祭りの期間内で高得点を叩き出した方には豪華景品をお渡しします! さぁ、我こそはと思う方は──」
彼らは回りくどい言動より、ドストレートに言った方が物事を受け入れやすい。
そしてそれは正解で……挙って獣人たちがこちらにやって来る。
──うんうん、レッツデータ収集といきましょうか。
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