虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
竜の里 その20
「──さて、大人チームにおいてもっとも高評価だったもの。それは、彼らが迷宮を用いた意味を理解していたからです。そのゆえの残り30点であり、子供チームがその評価を受けられなかった理由です」
結論から言ってしまえば、勝負の行方は最初から決まっていたわけだ。
そのことに気づいていたからこそ、この計画に『龍王』さんも孫娘も乗ってくれた。
「竜にとって……いえ、生き物にとって大人とはどういった存在なのか? それは少なくとも、力を制御しているという意味ではございません。大人とは、子供たちの見本となれる存在のことです」
ショウやマイにとって、それが最初の大人の理想像として在れるように。
その姿を見て、背中を追うことで子供は大人への憧れを抱く。
「説明を続けましょう。魔物の討伐などは、最初の20点です。残った30点は純粋に、彼らの連携を意味します。攻め、受け、探しに作戦。迷宮内において、彼らが行ったあらゆる行動に連携がございました」
子供たちが同じ方向に向いているだけだと考えれば、そういった工夫を凝らしていた大人たちも評価できよう。
子供が徒競走をしている中、大人はムカデ競争をしているようなものだし。
「そも、迷宮は勝敗を決するためのものであり、皆さん子供チームが納得しなければこの諍いは続いたでしょう。ですが、理解できたはずです。この勝負において、皆さんは本当に攻略を自分たちで行えたのでしょうか?」
自覚はあるはずだ。
現に呟き始めている……孫娘が居たからこそ、攻略できたのではないかと。
それは最初にこの諍いを始めた、代表者の子供も同じようで。
──項垂れた姿を見て、ようやくこの依頼が終わったと思えた。
◆ □ ◆ □ ◆
それからまあ、いろいろやった気がする。
迷宮の管理者を決め、子供たちに約束通り『プログレス』を配り……『龍王』の称号を継承する瞬間を目撃したり。
とりあえず『龍王』は【結界王】と呼ぶことになったが、孫娘の呼称に関しては変わらず孫娘だ……いちおう、竜としての真名も授かっていたけどな。
俺が呼ぶと面倒なことになるらしいので、孫娘という仮名のままだ。
「では、お世話になりました」
「しばらくは『プログレス』やら迷宮やらで忙しくなりそうじゃしな。うむ、またいずれ再会しよう」
お見送りには【結界王】と新『龍王』である孫娘が来てくれた。
ここに滞在中、いろんな技術を学んで教えたりしている。
「『生者』さん、またいらしてください」
「ええ。孫娘さんも、立派な『龍王』になってくださいね」
「はい!」
……なんだか、【結界王】の目が怖いのだがそういう気はありませんので。
殺意に殺されながら、俺は竜の里を離れるのだった。
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