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虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

竜の里 その19



「──さて、結果発表!」

 両チームが迷宮から帰還して、しばらく休憩時間を与えた。
 それからまたしばらくして、招集した二つのチームメンバーに宣言する。

「互いに迷宮を使って競ってもらいました。行ったすべてがポイントとして数値化され、あちらのボードに表示されていきます」

 投影したホログラムに、子供チームと大人チームの名前と数字の0を表示してあった。
 これからそこに、どんどん彼らの功績を数値化して載せていくわけだ。

「まずは子供チームから。その素晴らしい速度で行われた迷宮の攻略、そして大規模な威力による地形殲滅。純粋にその二つに特化した評価となります」

 好成績なタイムアタック、そして地形破壊ボーナスといったところだろうか。
 死者判定は孫娘が居たお陰でゼロだし、減点なども確認できていない。

「──さて、それらの成績を考慮して出された点数は……80点! ちなみに100点満点ですので、かなり好成績ですよ」

 普通に迷宮を攻略して、彼らと同じくらいの時間なら……50点ぐらいだろうか。
 あくまでも大規模な破壊行動、魔物の瞬殺ボーナスなどでおまけが入った結果だ。

 子供たちは俺の言葉を聞き、それなりに盛り上がっている。
 孫娘だけは冷静だが、他はもう勝った気でいるようだな。

「対する大人チームは──90点! よってこの勝負、大人チームの勝利です!」

『ちょっと待ったー!』

「……おや、何かご質問でも?」

『あるに決まってるだろ!』

 まあ、思いっきり端折ったからな。
 現に当の大人チームでさえ、ぽかーんとした表情を浮かべている。

 子供たちがそういった反応をすると分かっていたからこそ、俺はあえてこんなわけの分からないような纏め方をしようとした。

 ……そうでもしないと、しっかりとした理由を聞こうとしないからな。

「では、順に獲得したポイントをご説明いたしましょう。まずはタイム、こちらは加算なしのノーマルなものですので、ゴールできたという分で20点となります」

 80と表示された子供チームの隣で、大人チームの数字がまず20と表示される。
 子供チームの内訳も言ってあるので、言い終わるまでは大人しくしているだろう。

「そして、自然治癒以外の回復行為が確認できなかったということで10点加算、迷宮内のマッピングを階層ごとに行っていたということで25点加算です」

 数字が35、60と増えていくごとに少しずつ顔が真っ青になる子供チーム。
 いやまあ、先にネタバレされているわけだから、分かっているだろうに。

 だからこそ、というものでもある。
 自分たちにとって足りないモノ、それをある意味突きつけられているのだから。


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