虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

竜の里 その18



 迷宮を攻略し、どんどん次なる階層へと向かう竜族の二チーム。
 すでに両チームとも、最終階層である五階層に辿り着いていた。

「すでにボスとバトルを開始した子供チームに対し、どうやら大人チームはしっかりと五層のマッピングを行うようですね」

「速度を重視した子供チームとは打って変わり、大人チームは本当の意味で攻略するようじゃのう。これまでも宝箱や魔物の討伐をしておったが、あえて何も用意されていないこの階層でもマッピングを行うのか」

「ですがこれは、決して意味の無い行動というわけではありません。どのような行為であろうと、必ず加点はされますので。さて、この選択がどのような結果を生むのか……見物ですね」

 さすがにボス戦なので、子供チームも奥の手である『龍王』の孫娘を頼っている。
 なので攻略速度はそれなりに早く、ボスをガンガン追い詰めていた。

 一方の大人チームは、そんな終了直前でボスの部屋へ入る。
 熟練の腕であっても、やはりボス戦にはそれなりの時間が掛かりそうだ。

「おおっとここで、ボスの討伐に成功した子供チームが核に触れてゴール! 到着時のタイムは……一時間三十二分八秒です!」

「五階層の迷宮とはいえ、その速度自体はなかなかのものじゃった。『生者』の悪辣さが難易度を上げていた迷宮を、よくぞそれだけの時間で攻略できたと言えよう」

「……そこまで言いますかね。ですが、そう簡単に攻略されては競えないので、それなりに頭を凝らしたとは思いますがね」

 迷宮は『SEBAS』にコンセプトだけ教えて造ってもらったが、思った以上にサクサク攻略された……まあ、竜族のごり押しを甘く見ていた結果だったな。

「さて、大人チームですが……なるほど、この手で来ましたか」

「竜化を行い、速攻で倒すか。たしかにこれは、力の制御ができている大人チームだからこそできることじゃな」

「ええ。子供チームには孫娘さんが付いておりますが、それゆえに選択肢が狭まったとも言えますね。彼女がいるからこそ、最後に任せればなんとかなる。それはたしかに事実ですが、正しいとも言えません」

「共に研鑽し、力を合わせる……竜化の制御ができなかった者の中にも、支え合う者の強さを知ったからこそできた者が居たのぅ。それを知らぬ若者たちに、そのような考えに至れという方が酷ではあるか」

 それから大人チームは、ドラゴンの群れというチートに近い攻撃でボス戦を子供チームよりも早く終わらせた。

 その結果、共にタイムでの減点は無し。
 さてさて……それぞれの攻略方針が、勝負の結果を決めるわけだ。


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