虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
竜の里 その17
というわけで、迷宮攻略を競う竜族たちの戦いが幕を開いた。
大人と子供、二チームに分かれて同じ構造のそれぞれの迷宮を潜っていく。
「さて、今回の攻略の模様は竜の里全体に放送しておりまず。実況担当は私、『生者』です。解説担当は──」
「うむ、『龍王』じゃな。里だけであれば、これ以上の説明は不要じゃろう」
「では、始めさせていただきましょう。今回の迷宮攻略、その鍵はなんでしょうか?」
「……各チーム、何を目的にするかじゃな。速度重視で迷宮を踏破するか、それとも制限時間ギリギリまで中を暴いていくか、それによって手に入るポイントが違うのじゃろう」
二人で竜の里全体に届く放送を行い、迷宮攻略に関する情報を伝えていく。
突然放送し始めたので、そういった配慮はやはり大切だろう。
「奥が深いですねぇ……っと、ついに子供たちが二階層に到達したようですね。一階層の石材迷路とは打って変わり、二階層は天然のジャングル迷路となっております」
「ふむ、本来であれば隠密性の高い魔物が不意を突いてくる形になるのじゃろうが──」
「おおっと! これは凄い、『龍王』さんの孫娘さんによる支援を受け、子供チームは一直線に息吹で道を開いた!」
「……孫娘は望んでいなさそうじゃが、あくまで奴らの意見を尊重すると言っておったしのう。たしかに最短で進むのであれば、あの方法も悪くは無かろう」
映像の中では、物凄い魔力の奔流が森を突き破り道を切り開いていた。
在ったものすべてが焼失し、ただただ次の階層へ繋がる道だけが残されている。
「──さて、ここでこの映像を観ている方々にのみ、獲得ポイントの詳細をご説明いたしましょう」
「そうじゃな、このようなやり方で得られるポイント。また、減ってしまう条件などを教えてもらいたい」
「先に言っておきましょう、時間以外の減点は死亡判定のみです。致死のダメージを受けた場合、死亡判定を与えて強制的に迷宮から脱出させます。その経費ということで、残念ながら減点させていただきます」
「……ふむ、蘇生は可能ではあるが迷宮の攻略においては悪手。そもそも、死者を出す時点で竜族の名折れ。その判断は妥当じゃな」
ダメージだけで減点、というのはさすがに可哀そうなので無しにした。
RTAをするためには、多少のダメージは覚悟するってやり方もあるしな。
「そして、フィールド破壊ボーナスや魔物蹂躙ボーナスなどもございます。ですので、先ほどの一撃でポイントは手に入っています」
「……それは、ちょうど今二階層へ到達した大人チームと比べてどうなのじゃ?」
「さて、どうでしょうか?」
そんな脳筋なやり方で、人様が真面目に考えた迷宮を台無しにされるのだ。
仕掛けも何も突破していないならば……まあ、つまりそういうことである。
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