虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

竜の里 その16



 竜族の大人VS子供によって行われる、迷宮攻略大会。
 俺は暫定的な迷宮の管理者として、その説明を公平に行う。

「これより皆さんには、大人と子供に分かれて迷宮に挑んでもらいます。迷宮内部に関しては、まったく同じものを用意しておりますのでご安心を」

「……本当か?」

「では、私もこれに関しては神竜様に誓いを立てましょう。迷宮は公平、まったく同じ構造となっております」

 この言葉を伝えれば、竜族たちは何も言わなくなる……うん、そこは子供も同じ、要は大人の意見を全面的に否定しているわけではないのだ。

「では、改めて。内部での攻略ですが、単純に核のある最下層へ辿り着く速度だけではなく、魔物の討伐数なども計測しております。そうして数値化したポイントが、多い方が今回の勝者となります」

「『生者』殿、どのような行動が高い評価を頂けるのか?」

「残念ながら、それは秘密です。ただし、迷宮を一定時間内に攻略できない場合、秒単位で減点を行います。ですので迷宮に籠もり、できることすべてを行う、という考えはお控えください」

「ふむ……覚えておこう」

 粘られても無駄に時間を使うだけなので、そこはシンプルに強制しておいた。
 どこまで攻略と踏破を同時に行うのか、これが勝負所だ。

「では、迷宮のご説明をしましょう。迷宮は五階層、魔物や罠、宝箱などは予め配置しております。階層ごとに異なるフィールドが用意されており、最下層である五階層には守護者が待っています」

 迷宮の内部構造を載せたホログラムを、この場に投影する。
 これを見て即座の踏破をするでもいいし、攻略を行うために使うでもいい。

 だが、そのホログラムには所々黒い部分が存在する。

「こちらが迷宮の地図です。ただし、見ての通り一部は詳細が分かりません。迷宮の踏破には直接繋がりませんが、もしかしたら高得点になり得るものがあるかもしれませんね」

「「…………」」

「では、間もなく迷宮を開通します。両チームとも、準備をお願いします」

 迷宮は入り口を塞いでいた。
 これは通行を拒むためだけではなく、従魔や魔法による侵入を防ぐためでもある。

 迷宮は完全に入り口を抑えていると、その間のあらゆる干渉を拒絶できるのだ。
 まあ、迷宮の耐久度を超えた干渉(物理)ならできるけどな。

 なんてことを考えている間に、両チームの準備が整ったようだ。

「──準備ができたようですね。それでは、攻略開始です!」

 壁が取り払われたその瞬間、子供も大人も迷宮に殺到する。
 ……さて、勝つのはいったいどちらになるのだろうか。


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