虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
竜の里 その15
神竜の古巣
もともとの名称に倣い、迷宮の方にも同じ名前を設定しておいた。
とはいえ、まだ迷宮として『らしさ』というものは何もしていない。
せいぜい用意した台座の上に、迷宮核が置かれているぐらいだ。
「これで迷宮化は完了しました。魔物の意図した発生は防いでありますので、これまでと変わらないでしょう。そういったことは、皆さまで管理者を選定して決めてください。現在は宝箱も出ませんので」
「ふむ、迷宮と言えば宝じゃな。なるほど、早急に決める必要がありそうじゃな」
「【迷宮主】は迷宮の崩壊が死に繋がってしまいますので、管理だけでなく防衛に関しても欠かさないでください。皆さまの望む品を迷宮に提供させるのであれば、就職は必須条件と言えましょう」
迷宮は勝手に育つが、意図的に迷宮を操作できるようにするなら【迷宮主】が要る。
今は俺が間接的に操作しているが、いつまでも俺頼りというのは……いろいろダメだ。
死者が出るという話は本当だが、それでも必要経費というものだろう。
正式に迷宮の関係者になれば、その気になるだけで不老の存在になれるわけだし。
この世界の【迷宮主】は、その命を迷宮とリンクする。
そのため寿命という概念は失われ、迷宮が存在する限り半永久的に生存可能だ。
まあ、それに心が耐えられるかどうかは別なので、老いないだけで死ぬことはある。
そんな【迷宮主】は必要不可欠……考えて選んでもらいたい。
◆ □ ◆ □ ◆
選定はまた別の機会にするそうだ。
まあ、誰彼構わず選んでしまうと、悪用されてしまうからな……不老で迷宮を自在に操れるとなれば、やりたい放題間違いなし。
「──ではこれより、大人対子供による迷宮攻略大会を始めさせていただきます」
さて、どうしてこうなったと突っ込まれること確定なイベントの開催を宣言する。
そもそもここを迷宮化したのは、こういう目的のためでもあったのだ。
ちなみに反抗していた子供たちは、すでにこの場に集めてある。
俺が行ったのだが……うん、強制的に劣化『死天』アイテムで鎮圧しました。
そのまま俺に気づかせることなく、彼らの目が覚めたときにはこの場である。
そりゃあ騒ぎに騒いだけど……竜族は敗北したと自覚すれば、物分かりがいいようだ。
「マジで、勝てば俺たちは許されるのか? それに、その……プログレスまで」
「ええ、お約束しましょう。勝利すれば貴方たちには自由が与えられ、敗北してもこれは渡されると。そしてこれは、『龍王』さんたちもお認めになりました」
「うむ、神竜様に誓おう」
最上位の誓いを告げることで、子供たちもとりあえずの納得をした。
……さて、ルール説明をしようか。
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