虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

竜の里 その14



 そこからの流れは速かった。
 俺たちはまず、神竜が寝床としていた場所に向かう。

 天井に穴が空いて、上からの光が降り注ぐ綺麗な場所だった。
 水晶でできた花とか、虹色に光る鉱石とかもあったので許可を貰って採取してある。

「──そして、最後はこれです」

「ふむ……迷宮核ダンジョンコアじゃな。まさか、本当にこれを扱えるとは」

「休人は死んでも職業を剥奪されるだけですので、比較的容易に扱えるんですよ。それに希少度という意味でも、運営……えっと、私たちの管理者が開く祭りに参加すれば、手に入ることがありますので」

「『生者』すらも統べる者たち、か。相対することなく、平穏に生きていきたいのう」

 なんて会話をしながら、『SEBAS』の指示を聞きながら作業を行っていく。
 アイプスルに迷宮があるのだから、その管理方法も熟知済みである。

「管理や発生方法にまだ謎が多い迷宮ですけど、起動方法の一つに命があります。核に命そのものを捧げることで、迷宮はその命が有していた魂魄の強さに応じた難易度を誇る代物として出現します」

「ふむ、エネルギーの密度が高いところにも発生するという話を聞いたことがある。ではなぜ、ここには発生しなかったのか?」

「自然発生の場合、通常の魔力に加えて多少の瘴気が必要ですので。仮説では、迷宮とは自浄作用の産物ですから。そして何より、おそらくエネルギーに迷宮の格が足りなかったと思えます」

「格が足りない?」

 まあ、ここは神竜の寝床なんだから当然と言えば当然か。
 もうそろそろ迷宮ができるが……うん、説明しておくか。

「迷宮核にも品質がございますので。ただ、自然発生の場合は核が存在せず、長い年月の間でそれを生成します。ですがここは神竜の去った地、残されたエネルギーもかなり質の高い物でしょう」

「うむ、ここに居て分かると思うが、神竜様の御力はすべての竜族が束になってもなお届かぬものよ」

「はい。ですので迷宮を生み出すにも、相応の格が必要となります……ですが、さすがに対応できなかったのでしょう。そのためエネルギーは残り続け、迷宮は発生しません。今回は私の命を捧げ、強制的に生みだします」

 用意した迷宮核も最上位の品なので、この神竜の残滓が残る場所だろうと発生できる。
 何より、捧げたのが俺の命だからな……絶対に対応できるだろう。

「なお、命を捧げた場合はその格に合わせた難易度になると言いましたね。要するにレベルや保有するスキル、種族などが関係するわけです──私のレベルが999ですので、そちらでも問題ないのです」

 驚く竜族たち。
 まあそうだよな……偽装して隠していたレベルだし、視ても違う数値が出ていたはず。

 自分たちでも視れないものだった。
 それがある意味、彼らのプライドを傷つけるものなわけだからな。


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