虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
竜の里 その13
結界使いとして、最上位に近い領域に辿り着いていた『龍王』。
それに加えて、彼の呼称そのものである権能がまだ残っている。
それ自体は、俺もすでに把握していた。
効果は、孫娘の先天的能力である、あらゆる竜の能力を使えるというもの。
他にも成長速度を高めるという効果もあるのだが、そこは『騎士王』に劣る。
……いやまあ、それは『騎士王』が異常なだけで充分なものだが、
「『生者』よ、お主ら休人は肉体と魂が別なのじゃろう?」
「そうですね、そのうえ異なる時間を生きておりますので……約束事には苦労します」
「そして、お主らが死んだ際には魂を保護したうえで肉体を再構築。受肉を行い、蘇生が完成するのじゃろう? ならば、その保護された魂を隔離すればどうなるじゃろうか」
「……なるほど、考えたモノですね」
俺の権能『生者』は、あくまでも休人という存在すべてが持つ権能によるものだ。
死に戻りに紐づけられたそれは、高速化された蘇生でしかない。
つまり前提である死に戻りを無効化されてしまえば、俺は蘇生できないということ。
今まではどうにかなっていたが……さて、いったい何をするのやら。
「魂の観測、それはたとえあらゆるものを見通す竜族の瞳であっても困難じゃ。それでも【結界王】に就き、新たな力を得た結果……観測に成功した」
「…………」
「魂を捕らえる牢獄。“魂封牢界”、それを今構築した。これより先、お主が死ねばしばらくの間何もできないじゃろうよ」
「では、試してみましょう」
俺はすぐさま『デッドタナトス』の鎌に近づき、その身を刃の前に晒す。
そしてそれはそのまま、俺の心臓を突き刺した。
死んだことで、死に戻りが起動。
魂は隔離され、肉体の再構築を行い蘇生を行う……そして、『龍王』の結界の効果で封印される。
──まあ、そうなるはずだったんだろう。
「…………仮説通りでしたか」
「なぜじゃ、儂の魔法は正常に作動しているはずじゃろう!?」
「魂の観測は『龍王』さんにしかできない、そんなことはありませんよ。冥界や魂のみで活動する世界など、私はさまざまな場所を訪れています。そして、時には魂を留めなければいけない場所もございましたので」
とても頑張ったようだが、ある意味死に続けている俺は魂のエキスパートだ。
とっくの昔にその弱点は判明済み、すでに『SEBAS』が対策済みだった。
お陰様で、死に戻りそのものを邪魔されることなく蘇生を行えるようになっている。
仮に俺を殺したいのであれば、少なくとも『SEBAS』の想定外で無ければな。
──そして、『龍王』は降参した。
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