虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
竜の里 その12
これまで見た中で、『龍王』の使う結界がもっとも強度を持つ硬さを有していた。
あの『侵略者』の侵蝕攻撃に関しても、そして『騎士王』の攻撃をも凌げている。
……まあ、後者に関しては当人が手を抜いていたというのもあるけど。
今回の俺のように、何らかの方法で結界の強度を弱めないと砕けない。
そんな結界の恐ろしいところは……構築にいっさい権能が関わっていない点だ。
「ほっほっほっ。よもや、自慢の結界が砕けるとは思わなんだ」
「……これだけやって、ギリギリですが」
「そう卑下することじゃない。永い時間、緻密な操作、そういった事を重ねた結果至った結界じゃ……お主のお陰で、より高みへと至りし結界じゃ──もう一枚味わうがよい」
《強度向上を確認。しかし、これは……》
俺が砕いた結界の奥に、まだ結界を用意していた『龍王』。
そして、結界は再び構築される……話によれば、先ほど程の強度は無いはずだが。
どうやら『SEBAS』によると、そうではないらしい。
ということは、その後に告げた更なる高み的な発言が関わっているのか。
「……今のご職業は?」
「竜の里族長衆相談役……といった冗談が効きたいわけのではないのじゃろう? 今の儂は──【結界王】へ至ったよ」
「なるほど、それで瞬間的リソースにも変化が生じたわけですね」
まあ、名前の通り結界使いの王様として、技術や能力が向上したのだろう。
おそらく才覚とかそういうものではなく、純粋な技量と膨大な年月で至ったんだな。
俺がやったのは、それをほんの少しだけ加速させただけ。
そしてその力をこれまで伏せて、戦っていたということは──本気を出したらヤバい。
「なるほど。では、ここからが本番ということで──『ヘビーウェポン』」
グローブに掛かる質量が増し、実質的な威力向上を図る。
重力操作を機能として最初から組み込んでいるので、動かしづらくなることは無い。
最適化された『拳王』の動きを使って、再び結界を砕き始める。
先ほどの破壊で強化補正が上がったので、速度などや威力がどんどん上がっていく。
気持ちよく連撃を……と思っていたが、体が突然動きを切り替えて回避を行う。
死亡レーダーとリンクしているので、気づけたのもあるが……俺は認識できなかった。
それは突然、空間を切り裂いた。
不可視の刃、魔力を自力で視覚化できない俺にとってはそれはそういった概念になる。
いつ行われたかは不明。
しかし、事実として俺の体が在った場所から斜線上にナニカが通って切り裂いていく現象を捉えられた。
「結界を斬撃に……でしょうか?」
「今の儂ならばできることじゃよ……さて、いつまで持つのやら」
死なないという一点に限れば、俺が終わることは絶対に無い。
そう思いたいが……この自信、もしかしたら何かあるのかもな。
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