虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
竜の里 その06
月末御礼の連続更新です(12/12)
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地面の中を潜って、ひたすら島の中を調査している。
残留思念というか、代々竜の子供たちが使い続けた場所なので……収穫はあった。
この場所は竜の力を制御しやすいのだ。
力の方向性が定まっているというか、意図的に内部で発せられる力に限り操作しやすくしてあるというか……。
この仕組みは誰かが用意したというものよりは、染みついた想いに因るものなのだ。
上手くなりたい、上手くなってもらいたいという意思が形になっているのかもな。
「俺も竜系の職業、もしくは竜魔法を使えるようになったらここで学んだ方がいいかな」
《解析は済ませておりますので、アイプスルでの再現は容易いかと。より精度の高い補助が可能です》
「さすが『SEBAS』だな。まあ、神・世界樹もあるからアッチでもいいか……要はノリの問題だな」
《すべては旦那様のご意思で結団なさることです……間もなく到着します。ご自身の体勢にご注意ください》
そう言われ、一度姿勢を直立にしてから前に進む。
すると『SEBAS』の言う通り、俺の体は地面から抜け出た。
「……水の中か? まあ、状況を探るのにはちょうどいいか。とりあえず、頼む」
《畏まりました──水中ソナーを展開》
「しかしここ、結構明るいな。例の光る鉱石がここにあるのか?」
魔力を帯び、自ら光る鉱石。
たとえここが島の地下であろうと、明るいと思えるのはそれが理由だろう。
《異常、確認されませんでした》
「よし、なら出るか」
太鼓判を押され、安心して浮上する。
結界を解除して、ようやく俺はしっかりと呼吸することが──
「ッ!?」
「……こ、こんにちは」
その直後、息が止まるような状況が俺を待ち受けていた。
誰も居ないはずの空間に、なぜか居る一人の少女。
突然出てきたことに驚いたのは彼女も同じなのか、口をパクパクさせて尻もちをついていた。
《大変申し訳ありません。ソナーのみでは探知できない高度な欺瞞、そして存在を周囲と同化することが可能なようです。旦那様越しにしか視認できておりません。カメラは今なお、少女を補足できておりません》
「……なんともはや、驚きを隠せないです」
明らかに動揺しているのにそのジャミングが突破できないというのであれば、それは彼女の意思に反せず維持できるのか、あるいは意思に関係なく常時展開されているのか。
「あ、あの……あ、あなたは……」
「これはこれは、申し訳ございません。私の名前は……『生者』と申します」
隠すこともできたが、竜には真実を見抜ける個体がいる。
何より高度な欺瞞能力だけではないだろうと、いろんな情報が俺に予感させていた。
「差し支えなければ、お嬢様のお名前をお聞かせ願えませんか?」
「……あなたは、この里の者ではありませんね? 竜族の子は、真名を持ちません。それは大人へ至ったとき、初めて与えられます」
少し冷静になったのか、少女は俺にそう教えてくれた。
敵意のようなモノはなく、ただ本当にどうしてという感じだな。
「なるほど、そうでしたか。ご想像通り、私は他所から招かれた者です。そしてそれは、あなたの──お爺様のご意思です」
「……お爺様の?」
彼女こそが、『龍王』の孫娘。
本人の肯定も確認できたし……さて、事情聴取と行きましょうか。
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地面の中を潜って、ひたすら島の中を調査している。
残留思念というか、代々竜の子供たちが使い続けた場所なので……収穫はあった。
この場所は竜の力を制御しやすいのだ。
力の方向性が定まっているというか、意図的に内部で発せられる力に限り操作しやすくしてあるというか……。
この仕組みは誰かが用意したというものよりは、染みついた想いに因るものなのだ。
上手くなりたい、上手くなってもらいたいという意思が形になっているのかもな。
「俺も竜系の職業、もしくは竜魔法を使えるようになったらここで学んだ方がいいかな」
《解析は済ませておりますので、アイプスルでの再現は容易いかと。より精度の高い補助が可能です》
「さすが『SEBAS』だな。まあ、神・世界樹もあるからアッチでもいいか……要はノリの問題だな」
《すべては旦那様のご意思で結団なさることです……間もなく到着します。ご自身の体勢にご注意ください》
そう言われ、一度姿勢を直立にしてから前に進む。
すると『SEBAS』の言う通り、俺の体は地面から抜け出た。
「……水の中か? まあ、状況を探るのにはちょうどいいか。とりあえず、頼む」
《畏まりました──水中ソナーを展開》
「しかしここ、結構明るいな。例の光る鉱石がここにあるのか?」
魔力を帯び、自ら光る鉱石。
たとえここが島の地下であろうと、明るいと思えるのはそれが理由だろう。
《異常、確認されませんでした》
「よし、なら出るか」
太鼓判を押され、安心して浮上する。
結界を解除して、ようやく俺はしっかりと呼吸することが──
「ッ!?」
「……こ、こんにちは」
その直後、息が止まるような状況が俺を待ち受けていた。
誰も居ないはずの空間に、なぜか居る一人の少女。
突然出てきたことに驚いたのは彼女も同じなのか、口をパクパクさせて尻もちをついていた。
《大変申し訳ありません。ソナーのみでは探知できない高度な欺瞞、そして存在を周囲と同化することが可能なようです。旦那様越しにしか視認できておりません。カメラは今なお、少女を補足できておりません》
「……なんともはや、驚きを隠せないです」
明らかに動揺しているのにそのジャミングが突破できないというのであれば、それは彼女の意思に反せず維持できるのか、あるいは意思に関係なく常時展開されているのか。
「あ、あの……あ、あなたは……」
「これはこれは、申し訳ございません。私の名前は……『生者』と申します」
隠すこともできたが、竜には真実を見抜ける個体がいる。
何より高度な欺瞞能力だけではないだろうと、いろんな情報が俺に予感させていた。
「差し支えなければ、お嬢様のお名前をお聞かせ願えませんか?」
「……あなたは、この里の者ではありませんね? 竜族の子は、真名を持ちません。それは大人へ至ったとき、初めて与えられます」
少し冷静になったのか、少女は俺にそう教えてくれた。
敵意のようなモノはなく、ただ本当にどうしてという感じだな。
「なるほど、そうでしたか。ご想像通り、私は他所から招かれた者です。そしてそれは、あなたの──お爺様のご意思です」
「……お爺様の?」
彼女こそが、『龍王』の孫娘。
本人の肯定も確認できたし……さて、事情聴取と行きましょうか。
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