虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

大量発生後日談 その10

月末御礼の連続更新です(06/12)
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 闇厄街 霊子変換室前

 黒い箱から出てきたアイテムの内、まだ二つは何もしていない。
 だがその二つを、俺は『SEBAS』に頼まれてここに運びに来た。

「まあ、どっちも必要ないとはいえ、本当に譲渡していいのか?」

《旦那様がよろしいのであれば。この街に、それを必要としている者が居ます。旦那様がより良い世界を満喫するため、どうかご助力願えないでしょうか?》

「まあ、別にいいぞ。『SEBAS』は俺の言うことを聞いてくれるが、絶対服従ってわけじゃないんだ。いろいろやっていることも含めて、俺に協力できることがあったらいつでも言ってくれ」

《……その深い御心に、感謝を》

 俺の世界の迷宮だったり、この先にある街のことだったり……『SEBAS』が俺に内緒で何かをやっていることは知っている。

 だが、間違いなくそれは、必ず俺や俺の家族のためになることなのだ。
 それを疑うなんてことはせず、いずれ話してくれることを信じていた。

「それじゃあ、お供えをしようか……どうやればいいんだ?」

《入り口でコマンドを入力していただくことで、アイテムの転送が可能となっています》

「指示通りに入力すればいいわけだ……それじゃあコードを教えてくれ」

 その後、『SEBAS』に言われた通りにコマンドを入力する。
 なぜか『プログレス』とリンクしているようで、干渉してキーボードが出せた。

「入力完了っと。あとは、この穴の中にアイテムをぶち込めばいいわけだな」

 すぐに[ストレージ]を操作して、最後の二つを取りだす。
 壊れた船の模型と巻いて紐で縛った一枚の紙……それらを中に入れる。

 箱から出てきたときから、ずっとこの状態なのだ。
 それを中の人たちがどう使うのか……ある意味、楽しみでもある。

「そういえば、【試験職】の経験値はどれくらい増えたんだ?」

《一定行動による経験値の獲得により、常時化に必要な経験値が溜まりました》

「……意外と初めてなんだよな。よし、じゃあすぐにやってくれ」

《畏まりました──“職業強化”を起動。対象:(試験専用)、常用化──成功しました》

 いちおう[ステータス]を確認すると、画面に特段変化は無かった。
 だが、スキルの詳細を見ると、それらしき記述が載っている……まあ、成功したのか。

「よし、あとはそれ以外の強化をしていけばいいわけか……」

《前回ご説明した適性度以外にも、スキルレベルの制限や、ダメージパラメーターの向上などを行えます》

「いろいろと気になる単語もあるし、改めて調べてみようか」

《畏まりました》

 どうやら常用化できても、【試験職】に就いていないと経験値は稼げないそうだ。
 俺は複数の職業に就けるからいいけど……他の人にはそれはそれで大変な条件だな。


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