虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

大量発生後日談 その04



 黒色の輝きと共に箱の中から現れたのは、本来価値を定められないような品々。
 一つの箱に一つずつ、いろんなものが収められていた。

「まあ、一番無難なのは職業水晶か……これは俺でも使えるのか?」

《【救星者】の“職業系統樹”との互換性を確認。使用することで、ツリーが解放されるようです》

「職業名は【試験職テストジョブ】……うんまあ、読んで字のごとくだな」

 アイテムの説明を見てみるが、そこには何も記されていない。
 使うことで【試験職】に就ける、その程度のことしか。

「『SEBAS』、これの情報は?」

《この世界由来の職業ではないため、拡張情報にも載っておりません。完全に運営が用意した過去の職業を、こちらに転用しているように思われます》

「……俺の場合は強制固定化されても解除できるからいいけど、他の人は嫌でも一定期間は外せないからな。ある意味、運試しってことなのか」

 というわけで、さっそく利用する。
 すぐに【救星者】に組み込まれたという旨の通知が届くので、“職業系統樹”を介して転職を行う。

《職業スキル(試験専用)を獲得しました。レベルは1で固定、補正値は0です》

「……とんでもない職業だな。で、そのスキルの効果は?」

《…………。ありとあらゆるスキルや技への適性が手に入ります。ただし性能は初期状態のまま、いっさい変動しません》

「まさに試験運用のための職業ってわけだ。これを利用する利点、俺にあるか?」

 まあ、全部のスキルへの適性というのも気になりはするが。
 そもそも俺は意図してスキルを得ることができないので、あんまり意味が無いのだ。

 最近は『プログレス』の能力が職業スキルに反応する場合もあるが、それでもそんなに多くは無いからな。

《ございます。まず、レベルは1で固定されていますが、経験値自体の獲得は可能となっております》

「ふむ、つまり強化が可能だと?」

 経験値を注ぐことで、職業スキルの性能を高めることができる“職業強化”。
 スキルの常時発動は必要経験値が尋常じゃないが……うん、これはいけるな。

 詰まるところ、経験値を注ぎやすいのだ。

《初期状態からのレベル向上、適正の向上などございます。また、隠された能力を発現させることが可能です》

「隠された能力……か」

《改めてEHO関係者の情報を改めると、この職業に関する情報が記載されていました。効果は不明ですが、レベルが上がらないからこそとネタ的に仕込んだようです》

「……面白いな、それ。うん、いずれそれを発現させることを目標にしようか」

 補正が0なところも、俺としてはどうでもいいので問題ない。
 ……が、今は先に他のアイテムを調べていかないとな。


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