虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

大量発生後日談 その03



 残ったポイントを注ぎ込み、ガチャ系のアイテムを大量に買い込んだ。
 そして手に入った十個の箱を前に、俺は最高の結果を得るための儀式を行っていた。

「──:DIY:起動」

 本来、生産でしか能力値の引き上げを行うことができないチートスキル。
 そこはいっさい変更不可なので、それに関してはそのまま……なので今は生産中です。

 おまけにこの補正、LUCへの補正はまったくないので無意味になる。
 ……がしかし、今は『プログレス』という多種多様な能力があるからな。

「──“オールコンバート・ラック”」

 それは、指定した能力値を別の能力値へと上乗せできるという能力。
 まあ、無制限というわけではなく、上限が決まっているし変換率も抑え気味だが。

 所有者の変換限度は1万、そして変換効率は約三割。
 ただし今回発動させた能力は、全能力値を一点に集中させる代わりに効率が上がる。

「六万を四割……つまり、二万四千。普通ならこれで満足するよな」

 だが、ここで俺は禁断のポーションを口に含んでさらにブーストを掛けた。
 その名も『エクステンドポーション・ラック』、多大な代償を引き換えにする代物だ。

 飲むとしばらくはいっさいのポーションを飲むことができず、その能力値による恩恵が1か0の状態で固定されてしまう。

 普通の休人なら使いどころに迷うかもしれない……が、俺はもともとそんなものなので気にせずに利用する。

「ポーションのお陰で十倍、二十四万の運で開ければマシな結果になるだろう、加えて、称号で成功率を上げておこう」

 カジノで手に入った成功率補正、そして初期に得た『命懸けの愚行』など。
 出来得る限りの手を尽くして、ゆっくりと箱に手を伸ばし──開けていった。

  ◆   □   ◆   □   ◆

「……アタリはアタリで凄いな。八割がた成功したってところか?」

《申し訳ございません。満足のいく結果を出すことができませんでした》

「いや、俺としては一個でもアタリが出れば万々歳って感じだったからな。うん、使えるかどうかはともかく、アタリっぽいアイテムがこれだけ出れば充分だと思う」

 箱を開くと光のエフェクトが発生するのだが、八個が黒く輝き二個が虹色に輝く。
 前者が例の超最上位のアイテム、後者が本来の最上位アイテムの演出だった。

「虹色の方だって、片方は課金アイテムの盛り合わせだったし、もう片方だってどこかで使えそうな書類だったし……まあ、別にいいと思うぞ」

《書類の方は、なかなかに使いどころを考えさせられますが……いずれ、旦那様にとって最適なタイミングをお知らせします》

 まあ、その出番が来るかどうかは不明だけどな……さて、問題は黒い方なんだよな。


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