虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

大量発生イベント その19



「さすがショウだ……もう勝った」

「模造剣とはいえ、スライムと違っていろいろと制限が緩いからな。特にショウ君はスキルの動きを自分でやってもいるんだろう? なら、あの結果も当然か」

 銃使いの放つ弾丸を、ショウは反射神経と剣捌きだけで突破した。
 上手く躱し、上手く逸らし……上手く回避した果てに、急接近して斬ったのだ。

 いちおうレベル制限は掛かっているが、その程度でショウは弱体化できない。
 なぜなら、スキルの補正ではなく自分自身の動きで、ショウは戦っていたからだ。

「PS、プレイヤースキルが高すぎる。ちなみにお前、アレっぽいのできるか?」

「ふっ、愚問だな……未だに大車輪もできない俺に、いったい何ができると?」

「……お前、マジでそれ好きだよな。ともかく、超一流のプレイヤーともなるとできるようになっているものだよな。ショウ君は道場の影響もあるだろうけど、自前の技術があればスキル枠も無駄にならないしな」

 俺はまったく気にしたことが無いが、普通の休人はスキル枠で困るらしい。
 統合やらリセット、枠の拡張でどうにかしているらしいが……必ず限界は訪れる。

 そんなとき、スキルを使わないでスキルの再現を行う考えが流行ったそうだ。
 しかし、簡単な動きならまだしも、補正が無いとできない動きも多い。

「知ってるか? 凄い奴だと、スキル無しで斬鉄剣とかできちゃうんだぞ?」

「……まあ、俺も似たようなのは見たことがあるぞ。スキルが使えないはずなのに、魔法が斬られていたなんてことがあった」

「ああ、斬魔か。物好きが調べてたけど、魔力に干渉さえできれば理論上はどんな魔法でも処理できるらしいぞ」

 できそうな奴はいっぱいいるな。
 前提条件は魔力が籠もった武器でどうとでもなるので、後は純粋に剣技を磨けばその域に到達するだろう。

 ……えっ、俺か?
 まあ、参考になる戦闘データはあるし、魔法発動後、『SEBAS』が瞬時に術式の中核となる部分を見つければできるな。

 純粋な武人には遠く及ばずとも、その真似事程度であれば可能だ。
 本来の代償である肉体の自壊も、『生者』な俺には皆無だしな。

「まあ、さすがに模造剣じゃ壊れちゃうだろうから器用に逸らしていたが……ともあれ、決勝進出だな」

「ああ、楽しみだよ……というわけで、決勝戦になったら言ってくれ。少し、ルリの方にもツマミとかを転送しておく」

「……羨ましい限りだよ」

 そう言いながら、ピーナッツとセットな柿の種を食べるタクマ。
 ……そういうことを言うと、味を激渋わさび味に変えてしまうぞ?


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