虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

大量発生イベント その16



 再びイベント会場に直行。
 どうやらタクマが席を予約してくれていたようなので、そこに座らせてもらう。

 アリーナのように巨大な会場、舞台を見下ろしながらタクマと話す。

「──で、こっちは何をするんだ?」

「こっちも百人ぐらいに人数を絞ってあるから、バトルロイヤルで一気に減らす。四人になったら、準決勝と決勝で終わり」

「……減らし過ぎじゃないか? スライムのテイム者よりも、もっと数が多いだろうに」

「だが、減らすのもすぐにできるだろう? 敗北、もしくは生産者が用意したスライム素材使用のアイテムが破損すれば参加資格を失うって寸法だ」

 アイテムは予選と本選で別の物を選べるようだが、結局本選でも同じような敗北条件が定まっているらしい。

 あとは舞台から降りたら負け、その三つで参加者の勝敗が決まる。
 ……俺には不利な大会っぽいし、やっぱり参加しなくてよかったよ。

「そういえばプログレスの使用は不可になってたんだが……どうやったんだ?」

「いや、別に普通じゃないか?」

「……見えない領域型とか体内生成型とかがあるから、平等じゃないって言っていたのはまだ分かるぞ。けど、だからってそれを停止できるのもおかしいんだよ」

「まあ、このイベントはあくまで大量発生した魔物をメインにしているからな。ちなみにその質問の答えは、言うと結構ヤバいから言わないでおく」

 うへぇと呟くタクマは、結局その話を聞き出そうとはしなかった。
 そういう割り切りができるのも、情報屋ができている理由なのだろう。

 ちなみに理由はシンプル、前に『騎士王』に渡した犯罪者用の停止装置。
 アレは劣化版で、俺には管理者権限であらゆる『プログレス』を停止させられるのだ。

 まあ、いろいろと面倒臭いし、悪用されたら困るのでその権限も封印しているけど。
 そういうことができるので、生命維持に必要でもない限りは停止させることもできる。

 その権限を創造神様も持っているので、イベント中は封じたのだろう。

「ほら、始まるぞ。ちなみにバトルロイヤルだと、生産者が誰かなんて分からない。あくまで情報を調べるか、準決勝まで勝ち上がらないと情報は出ないぞ」

「むしろ、準決勝まで出たら生産者の情報が開示されるのか?」

「らしいな。だから、そういうのを秘匿している連中は出てこないし、これ幸いに顔バレOKな連中が名を上げようとする……どこかの有名な生産者さんも、参加すればもっと有名になったのにな」

「……そもそもイベントをやっているのに気づかなかったし、俺もいちおう名義を隠しているからやらなかったろうな。まあ、それはそれで隠す方法はあるけど」

 いちおう生産ギルドで特級会員なので、そういう恩恵にあやかることも可能だ。
 だが、それをしてもな……それをやるにしても、家族から要請があっただろうな。 


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