虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
大量発生イベント その13
そんなこんなで、始まったコンテスト。
次々とエントリーナンバーと休人名、そしてスライムたちの名前が呼ばれる。
名付けている者とそうでない者が居るようだが、無い場合は色で呼ばれていた。
ともあれ、順番にスライムたちが舞台に挙がってはアピールを行っている。
「マイの出番は……まだまだ後だな。だいぶ時間が空くのは、やっぱり参加者が多すぎるからか。こういうのって、いろんな場所で予選をするべきだったんじゃ?」
「これでもだいぶ絞ってあるんだぞ。これは本予選、前予選で万が百になっているんだから結構なもんだろ」
「……むしろ、そんなに参加してたのか? プレイ数が多いのも理由になるか」
「そこがマザーAIというか、EHOの凄い所らしいからな。全プレイヤーを同一のサーバーで遊ばせますよって……説明書にも、書いてあっただろうに」
俺もルリも、そういうのは見ないタイプだからな。
いちおう[ヘルプ]などは確認するが、外で見ることはあまりしないのだ。
「まあいいや……そんな百人の選ばれた参加者の中から、どうやってマイが一番に選ばれることになるんだ?」
「……お前ってヤツはなぁ。まあいいか、いちいち分ける必要も無いから、そのまま百人全員で決勝戦だ。それぞれ審査員のポイントと参加者のポイント、それらの合計で選ぶことになっているな」
「うん、要するにマイが満点評価で優勝するわけだな」
「…………お前、本当に親バカだな」
タクマが急に俺を褒めだした。
まあ、褒めても何も出ないのにな……そういえばいいツマミもあるし、観戦中に食わせてやろうじゃないか。
「……急に出してきたな、いやまあ貰うけども。というか、これって……マジか!?」
「ん? ビールだが、何か問題が? お前はビール派だったと思うんだが……もしかして種類まで注文するのか?」
「いや、別にそこはどうでもいいんだが……なんで出来てんだよ!?」
なぜ、と言われても……そもそも冒険世界では、ビールはすでに作られている。
問題はその味が、現実に比べてやや劣っているということ。
酒造りが得意なドワーフなども居るが、そちらは味というよりも酒精特化だしな。
さて、そんなビールを俺が作れた理由……それは、俺にも分からない。
だいぶ前、ハイで作業をしていた頃にもう出来ていたからな。
初期も初期、:DIY:を使った数が十回も行く前にその装置は完成していた。
「──でまあ、それを解析したうえで改良したのが飲料自動生成機だ。お陰でそのエナドリが切れなくてな、似たような感じで暴走したことが……って、もうマイが来た!」
「おい、もう少しその話を……いや、もう無理だな。よし、俺も応援するぞ!」
何か言っていたようだが、タクマもマイの応援を始める。
ビール片手に応援する俺たちって……なんだか目立ちそうだな。
──マイに派手に応援してほしくないと言われたし、ちゃんと結界で囲っておくか。
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