虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

大量発生イベント その11



 イベント終盤となったので、隠れ里から街へ移動する。
 だいぶ調味料を使った変化があるようで、なぜか街が色とりどりになっていた。

「……アレは、調味料でペンキを作ったってことか? いやはや、ある意味食への冒涜な気がするな」

 その使い方自体は、俺も調べている間に気づいてはいたんだよ。
 塗料として使うと、そのアイテムに耐性が付くからな。

 ただ、武器とか魔道具など小さいアイテムならともかく、家屋なんて巨大な物に色を塗るためにどれだけ調味料を消耗しなければいけないのか……そう考えて止めたのだ。

《ドロップ率の高いアイテムに絞り、塗料としての実験を行っているようですね。黄色の家屋が見つからないのは、それが理由です》

「ん~、そういや見つからないな。茶色はタレでなくとも、ソースとかで代用できるから色自体は問題ないのか」

 黄色は特別というか、戦隊でもカレー好きの象徴でもあったからな(偏見)。
 あれからいろいろとドロップさせてはいるが、黄色はカレー粉限定だった。

「……そして何より、スライムをテイムしている休人が増えたな。受け入れられる土壌ができていることにも、まあ驚いているよ」

《初めはレアドロップを出す『調料粘体フレーバースライム』のみが狙われていましたが、あることが判明したため今では多様な種がテイムされるようになりました》

「それはなんとなく分かるぞ。巨大化と同じように、成長にも必要なのは同じ調味料ってことだろう?」

《さすがは旦那様です。通常のレベル上げではすぐに限界値に達してしまいます。それ以上の成長を見込む場合、一定量、そして品質の調味料を提供する必要があります》

 さすご主の亜種はともかく、まあ妥当なやり方だとは思う。
 なぜなら今流行っている、『プログレス』も似たような育て方なわけだからな。

 ちなみにスライムの魔石を注ぎ込むと、スライム系の性質発現や調味料に関する能力が発現したりするらしい。

 後者は生産系の能力が主だが、戦闘系でも発現する奴が居るんだとか。
 ……粉塵爆発とか、調味料で行う化学現象のイメージが多いからかな?

「結構強くなっているみたいだな……でも、さすがに不公平にならないか? こう、できる奴とできない奴が居るわけだし」

《そこは一定レベルで固定となるようです。上げることで得られる利点は、スキルの習得などが修正されない点ですね》

 強ければ多くのスキルを得られるようになる、それは休人も原人も魔物だって変わらないルールだ。

 ……なのに俺って、カンストしても通常スキルは全然持ってないんだよな。


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