虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
大量発生イベント その10
簡易迷宮の方はさておき、街の至る所を散策していく。
そもそも、イベント時はあんまり隠れ里以外の場所に行かなかったからな……。
知らないことが結構多いのだ。
実際、過去にあったというイベントの名残があることを俺は知らなかったわけだし。
「……過去のイベントを、再現することができる装置か。使用不可能なのはイベント中だからなのか、また別の理由なのか」
街の片隅で見つけた、不思議な魔道具。
街を覆う壁に隠されていたのだが、宝珠のような形をしたそれは、何をしてもいっさい起動しなかった。
《運営謹製のアイテム、その中でもかなり高度な仕掛けが施されています。おそらく、こちらはマザーAIも仕様に関わっていると思われます》
「……『SEBAS』でも、何もできないとなるとかなりだな。全力でやれば、何か分かるんじゃないか?」
《現状では、まだ不可能です。仮に一部の情報を掴めたとしても、マザーAIによる監視網を掻い潜ることができません》
「俺も危険は避けたい、『SEBAS』の存在が何よりだからな。絶対にできる、その保証ができるまではやらなくていい。これは命令として、厳命しておいてもいいな」
別に運営を乗っ取って何かがしたいわけでもないし、現状維持が一番である。
ただ知りたい、それだけのために危険なことはやらせたくないからな。
「とりあえず、ノーマルな鑑定で分かるのはその程度か。運営関係となると、カンストのボーナスで拡張された部分でも分からないからな。まあ、当然だけども」
仮説ではあるが、EHOとはもともと有ったシステムの上に重ねて存在している。
分かりやすく言うと、別のゲームをコピーや流用し、新しくシステムを追加していた。
だからこそ原人と休人という違いがあり、俺にいろんな手助けをしてくれる神様たちが存在している……普通なら、誰かを依怙贔屓なんてできないからな。
まあこの仮説、ルリがいるとすべて台無しになるわけだけど。
……運に愛された彼女が望めば、いろいろと都合よくなるので。
◆ □ ◆ □ ◆
それから俺はエルフの隠れ里に戻り、そこでイベント終盤になるまで時間を潰した。
スライムを狩り、多種族と交流し、神様と会い……いろいろと経験を重ねている。
調味料をこちらの世界の素材と組み合わせて新たな調味料を作ったり、いっしょにスライムを狩り尽くしたり……まあ、新規の種族とも絡めるようになったな。
やはり料理の力は偉大というか、食という共通のコミュニケーションツールは便利というか……ともかく、だいぶエンジョイした。
──そんなこんなで、時間は過ぎたのだ。
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