虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
大量発生イベント その09
というわけで、再び街を練り歩く。
休人たちが調味料、もしくは調味料を用いて生産したアイテムを販売している。
「そして街の中央には、トレードコーナーとランキングのパネルが設置されていると」
転移装置のある噴水付近、これまでは設置されていなかった二つの物が置かれていた。
片方は自販機のような代物で、そこに一定数の調味料を入れると異なる物が手に入る。
もう片方は一定時間で内容が更新される板で、休人名ととある数値が記載されていた。
「今表示されているのは、討伐数か……匿名希望は隠せるみたいだな。で、本人や知り合いの名前は異なる色で表示されると」
なんでそんなことが分かるかって?
今見ているボードで、たしかに自分や知り合いの名前が違って見えるからだよ。
「ショウは十位か……パーティーでやっているのもそうだし、何より子供だからだな」
やはり大人と子供とでは、プレイに注ぐことができる時間が違う。
学校があるうえ、プレイ時間に制限が掛けられているため、さすがに一位は厳しい。
大人も大人で、たしかに仕事はあるが……こっちは最悪、有休を使えばいいからな。
内容はともかくイベントの存在自体は知られていたので、早めに届けは出せただろう。
「むしろ、六人で分けてもなお十位に入っていることを褒めるべきなんだろうな。うん、俺はソロでやってどうにか八位なわけだし」
狩場独占、広域殲滅をやっていたのでなるべくしてなった結果だ。
一時間ごとにランキングは更新されるらしいので、時間的に表示されたばかりだろう。
「そうだよな……狩場、普通は分け合うか誰も居ない場所を探すかだよな。むしろ、どうして俺より上の奴らはそんなに討伐ポイントが稼げているんだか」
《簡易迷宮、魔物発生のアイテム、誘因のスキルなどが挙げられます》
「……簡易迷宮が気になるな」
《ごくまれに発生する、核を持たない迷宮の総称です。最奥のボスを討伐、時間制限を超過した際は必ず崩壊するため、そういった呼ばれた方をしております》
ゲームの定番、ランダム発生系のフィールドなのだろう。
けどそれって、迷宮として在り方に違和感がある気がするな……。
「たしかこの世界の迷宮の設定って、世界のエネルギー循環とかじゃなかったか? なのに、それをやるための核が無いって……何のために発生するんだ?」
《簡易迷宮は迷宮付近や人の多く生活する場所に発生します。前者は迷宮の拡張、後者は核を持つ本来の迷宮が生まれるための土壌造りとなるのです》
「……火のない所に煙は立たぬ。要は、その場所に迷宮が発生しやすくするわけだ。不浄な土地にはアンデッドが発生する、それと似たようなものだな」
まあ、ちゃんと理由があったということで納得しておこうか。
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