虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

大量発生イベント その08



「……さすがは『SEBAS』だな。うん、しっかりとバフ効果もだいぶ強いのが付与されている」

 運ばれてきた料理は、どれもが美味しいうえにかなり優れたバフが付いていた。
 作り方を教授されているため、スキルレベル以上に丁寧な料理ができるのだ。

 ちなみに、スキルが無いと一定以上の効果があるバフは発現しない。
 どれだけの達人が作ろうと、味がいいだけで優れたバフが出ないわけだ。

 ……まあ、料理スキルが付与された魔道具などもあるので、基本的に問題は無いがな。

「そんな魔道具で最低限バフ効果が付くようにして、そのうえ『SEBAS』直伝の技術で美味しい料理を出せるようにしたのが、このカフェなんだよな……お陰様で、俺も儲けさせてもらってますよ」

 ちなみに契約をさせて、辞めたりしたらいろいろと処置・・をさせてもらう予定だ。
 別にいいんだけど、情報漏洩して誰かが得するというのも……アレだしな。

「ふぅ……一心地付いたし、そろそろ本題に移るとしよう。『SEBAS』」

《畏まりました。さっそくご報告を》

 ドローンを介して、『SEBAS』が休人や原人たちから集めてきた情報。
 その中でも信頼できる情報のみを抽出し、これから教えてもらうつもりだ。

「それで、外はどうなっている?」

《すでに多くの休人たちが討伐を行い、相当な量の調味料が街に流れております。中には旦那様がまだ確保していない物……たとえば柚子胡椒や南蛮味噌などもドロップしているようです》

「……どっちも元は、地方の調味料だったって話だな。というか、その元のスライムはどうやって生まれたんだか」

《旦那様もドロップさせたカレー粉や焼き肉のタレのように、一部は運営がデザインしているようですね。気づいておられないようですが、それらは特殊な能力を有したスライムとして発生しておりました》

 俺が参加していなかった初期のイベントにも、そうした運営デザインの魔物がボスとして登場していたらしいし……決して、不可能というわけではないのだろう。

 そうして用意した新種のスライムに、特定のレア調味料をドロップさせたわけだ。
 ……しかしまあ、俺は耐性貫通でサクッと殺していたから気づかなかったと。

「そんなのばかりじゃ、初心者にはキツイんじゃないか?」

《運営側が公式のトレードシステムを利用しまして、一定の調味料を用意すれば望んだ品と交換できるようになっています。なので、決して不可能というわけではないでしょう》

「レアな調味料……俗に言う万能性があればあるほど、たぶん高いんだろうな。そして、そうなれば別の手段に出るか」

《おそらくは》

 公式の方法があるから、必ずそちらを使わなければならないというわけじゃない。
 だからこそ、それゆえにと動くヤツがいるだろう……少し探ってみよう。


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