虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
大量発生イベント その07
すでに大量の『調料粘体』が狩られているため、初期地点の街並みにはドロップした調味料を売り捌いたりしていた。
討伐数は倒した瞬間に数を記録されているので、ドロップ品は不要になる。
それらは戦闘職から商人を介し、非戦闘職へと受け流されていく。
そして加工された品が、再び戦闘職たちへ回るようになる。
うん、しっかりと考えられた循環で、経済が巡っているとも言えたな。
「大手のクランが経済的な支援をしていることもあって、商人たちもわざわざセコい真似はしていないみたいだな……そういえば、俺もいちおう行商人だっけ?」
最近は『プログレス』専売の商人みたいになっていたが、かつてはネタアイテムを売り捌く商人だったはず。
まあ、ある意味『プログレス』もネタの産物だったのだが。
今ではそれこそが至上の品として、高値で売り買いされているからな……。
「さて、まずはバレないように情報収集の結果でも聞いておこうか」
《畏まりました。では、そちらのカフェで》
「了解っと」
ジンリに指名手配されているので、他者と接するのは不味い。
仮にここでは捕縛されずとも、マーキング系のスキルを使われる可能性もあるからな。
ドローンに案内されて小さなカフェに入ると、ドローンを店員が視認する。
「……こちらへ」
「ああ、頼む」
手広く(『SEBAS』が)交易をしている影響で、それなりに事業をやっていた。
案内されたこのカフェも、交易品の知名度向上のために買収した店舗である。
……もちろん、非合法なことはしていないし彼らが望まないことも何もしていない。
あくまで、経営難に力を貸して、いくつか協力してもらっているだけだ。
今回の例などがまさにそれ。
意図的に見せたドローンが連れた客を、特別な部屋へ案内するように……といった具合にサポートをしてもらうのだ。
「お食事はいかがされますか?」
「大丈夫……あっ、いえ。では、最近話題になっている魔物のドロップアイテムを用いた料理を頂きましょうか」
「……少々お待ちください」
出たばかりの物で料理を作れ、割と無理難題……しかし、それに応える店員。
それが可能な手段を、このカフェには提供してあるからな。
お辞儀をして店員が居なくなってから、俺はドローンに向けて話しかける。
「ここの売り上げはどうなんだ?」
《順調ですね。今回のイベントにおいても、すぐにその使用例を提示できたのが幸いでした。真似のしづらい技術で作り上げたアイテムによって、着実に利益を出しています》
「さすがは『SEBAS』、どんなことでもお任せあれだな」
《恐縮です》
うん、要するに『SEBAS』が手伝っているからこその繁盛っぷりだ。
さて、どんな料理が出てくるか……楽しみにしようじゃないか。
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