虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
大量発生イベント その04
森の中を、進んでいく。
目的地は[マップ]機能で表示されているため、迷うことなく霧の中を進んでいける。
「まさか、あっさりと教えてもらえるとは」
曰く、危険はあまりないが遠くて狩りづらい場所があるんだとか。
普段は森人にとって、討伐する必要のない魔物の発生源なので、無視されたそうだ。
「森の奥地だから、他の種族は来ない。そのうえ、弱肉強食が成立しているからわざわざ処理する必要も無いときた。うん、そのトップは死なないんだけどな」
ここは森獣……ではなく、一体の聖獣が守護してくれている。
まあ、一番最初のイベント時に、神様が付き添わせていたのでお目見えはしたがな。
「うん、場所はここか? ……うん、狩っていないのがよく分かるな」
大量の『調料粘体』たちが、森の至る所で溢れていた。
そして少しずつ、同じ色同士で合体して大きくなっている。
放置していれば、やがては多様な攻撃への耐性を得た厄介な個体になるだろう。
まあ、この地に限れば全部突破可能な聖獣が居るので問題ないんだけども。
「この森全体がピンチにでもならない限り、動かないみたいだけどな。というわけで、狩りを始めるか──『リアクトミー』」
まず周囲の魔物たちに、自分が居ることを気づかせる。
そして、魔物たちはその相手が自分より弱いことを瞬時に察しただろう。
「だからこそ、サクッと狩れるわけだな──[モルメス]+『リキッドナイフ』」
愛用する死神を冠したメスに、【暗殺王】の『プログレス』を掛け合わせる。
これは普段のダウンロードではなく、プログレスの恩恵を利用しての起動だ。
魂に直接ダメージを与える……スライムであろうと、そこに特化しなければ耐性を得ることができない。
そして、今はそれに加えて『プログレス』の能力も付与されている。
それは【暗殺王】のモノらしく、持ち主の能力に合わせたものだ。
「効果はシンプル、耐性貫通と成分吸収。他にもあるけど……今使えるのはこの二つだ」
『!』
「強制的にダメージは届き、そのうえ肉体を構成するナニカが奪われる。暗殺者の王様らしい、厄介な能力だよな」
スライムたちに命中したメスは、即座にその効果を示す。
どれだけ合体した個体であろうと、刺された途端にメスに取り込まれていく。
モルメスが魂ごと吸い上げているため、分離をする暇すら残さない。
最後には何も残されず、まるで最初から何もなかったかのような惨状だ。
……なお、実際には【暗殺王】が処理するから消えるだけである。
今回は魂ごと吸収しているからこそ、何もかも──経験値もドロップ品も残らない。
「それはそれで、ちゃんと能力を解除すれば元に戻るんだけど。今は処理が面倒だし、そのまま狩り続けるか」
そうして俺の、調味料を求める戦いは幕を開くのだった。
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