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虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

発生イベント 後篇



 俺がイベントの把握をできていないのは、それを調べる時間が無いから……というのもあるが、EHOの情報は公式サイトよりも先に内部世界の方が速く流布されるのだ。

 なのでタクマが知り得る情報も、実はまだネットでは出ていない情報の場合が多い。
 誰よりも早く、知られざる情報を把握しているからこそ、コイツは情報屋足り得る。

「まあ、迷宮に潜ったりマラソンしたり、いろいろと特殊なイベントが多かったよな。けど、今回はシンプルだぞ」

「シンプル、ねぇ……イベントらしいことなのか? 討伐とか、PvPとかそういう感じになるのか?」

「おっ、正解が混ざってたな。今回は討伐、というか特定の魔物に関するイベントだ」

「……その言い方だと、単純に魔物を討伐するだけって話じゃないみたいだな」

 EHOのイベントは、可能な限り平等に楽しめるよう設定されている気がするし。
 単純に討伐特化ならば、非戦闘職でも倒せるようにしないといけないはずだ。

 だがそれだと、高レベルの休人が無双するだけになるだろう……さて、いったいどういうイベントになっているんだか。

「EHOの設定上だと、イベント用の世界だと一定周期で特定の魔物が大量発生することになっているらしくてな。今回、その時期に祭りを開くことになったんだよ」

「……祭りってことは、楽しめるようにするわけだ。つまり、生産職とかでも何かしらできるようにしていると」

「正解! その魔物自体はまだ未発表だが、何をするかなんて話はもう出ていてな。討伐だけじゃなく、その魔物由来の素材を使った生産、それに契約した個体の品評会やら特殊な闘い方でコンテストをやるらしい」

「意味が分からないけど……まあ、誰でも楽しめるために頑張りました、感が凄いな」

 特に最後のヤツ、戦闘スタイルは千差万別なのでそうしたのだろう。
 単純な討伐速度だけじゃなく、斬新な倒し方とかで評価されるのかもな。

「魔物の情報が無いのは惜しいな……先にどういう個体なのか分かっていれば、ある程度対策がしておけたのに。始まったばっかりの頃にも、似たようなイベントはあったが……そっちは討伐専門だったからな」

「今後もやっていきたいんだろ。だから、毎回何が出るか分からない、みたいな感じで濁しておかないといけないわけだ。事前情報が無いからこそ、どんな物でも対応する柔軟さが……云々みたいな感じだな」

「要するに、出てきた魔物でいろんなことができればいいわけだ」

「お前なら間違いなく、その特殊部門を優勝できると思うぞ。参加するか?」

 ショウが討伐部門で優勝して、マイが品評会で優勝すること間違いなしだ。
 ルリはルリで……まあ、何かしらの活躍があるに違いない。

 俺にできることと言えば、生産である。
 戦闘はそのときに考えるとして、とりあえず魔物関係の生産技術でも磨いておこうか。


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