虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
目的探し その20
W8
「なんともまあ、大きいなぁ……」
エリアボスを討伐し、次のフィールドを見ていこうということに。
そこで見たのは、果てしなく広がる大きな河……エリアのほぼすべてが河である。
「ふむふむ、[マップ]によると渡る手段は二つか。強引に渡るか、資格を得て渡らせてもらうかだ」
橋などはいっさい架かっていない。
巨大すぎて架けられない……とかそういう理由ではなく、あえてそうすることで通行量に制限を設けていたりしているのだ。
科学技術が無くとも、魔法でどうこうできることが多いからな。
わざとやらないことにも、ちゃんとした理由がある……と教えてもらった(タクマ)。
「渡り船と魔法を組み合わせて河越えをしているけど、それ以外の手段で通ってもそれはそれでバレるんだよな……監視って怖い」
どういった手段で超えられるのか、それを調べているのだ。
戦争などが起きれば、この河は重要な場所になるし……帝国も気を留めている。
「けどまあ、河を潜る方は全然見てないし、そもそもそっちは対策しづらいから諦めてるみたいだよな。あと、対策しても魔物はどうにもならないか」
今回の俺も、そうして先達のように水の中から河を渡る予定だ。
結界の展開もできるし、死んでも蘇るからある意味酸素は不要だからな。
あと大切なのは、魔物に対処することぐらいである。
別にしなくても突破可能ではあるが、やらないと魔物の素材を集められないしな。
「絶対に壊れない結界……は無理でも、手抜きの『騎士王』が出す斬撃なら防げる硬度だし。まあ、いろいろやってみますか」
視界内転移でエリアの北奥へ飛び、そこに監視の目が無いことを確認。
それから『インビジブルクローク』付きの光学迷彩装置を使い、姿を隠す。
そのまま入水すると──すぐに死ぬ。
結界は魔物の攻撃を通さないだけで、水はゴボゴボと入ってくる。
そのため死因は水死、溺死などなど。
水でもいくつかの理由で死んでいく。
意外とあるんだよな……酸欠による心停止や脳死、単純な死に方も様々である。
魔物が体内に入ってくる……という死に方もあるが、これはレアケースだ。
俺もさすがにそれは体験したくないので、魔物の侵入自体は結界で拒んでいるぞ。
「あとは魔物を捌いて、素材をゲットだ。新鮮な分、いい素材が手に入るぞ」
そうして魔物をどんどん切って、河を西から東へ渡っていく。
少々時間が経って、俺はようやく岸辺に上がれた……そして、気づいた。
「なんで、俺は河を渡ったんだろうな」
見るだけで済まそうと思ったはずだが、気づけば俺はE9のすぐ近くに居る。
……まあ、ちょうどいいセーブポイントって感じがするけどさ。
というわけで、今回はここまでにしておこうじゃないか。
当初の目的も済んで、帝国に行くことを次の指標にできたからな。
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