虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

目的探し その16



 E6

 空から視界で認識したE5の最東へ転移した後、そのまま次のフィールドへ。
 幸い、ジンリによる指名手配(仮)はまだこちらまで及んではいなかったようだ。

 しかし、しばらくは迂闊な行動ができなくなったこともまた然り。
 ……とはいえ、どこでも好き勝手する手段はいくらでもあるんだけどな。

「さて、本当に初めてだな……」

 遥か先、十区画目にある場所ならば把握しているが、その中間はまったく経験が無い。
 その間にも魔物は居るだろうし、エリアボスだって存在する。

 始めた頃、『生者』になってすぐと比べて多くの力を持っている現状。
 ……まあ、その大半が借り物であり道具に由来する物という虚しい話でもあるが。

 だが、そこら辺はとっくの昔──オンゲーでランダムプレイをしているころから、割り切っていることだ。

 自分でいっさいの攻撃行為のできないプレイの時など、誰かが代わりに戦ってくれていたりしたしな……そのゲームだと、最後は支援者としてだいぶ有名になったっけ?

「──『タブースペルズ』起動、一日一回の“スペルドロー”っと」

 毎日欠かさず、『プログレス』を起動しては行っているこの能力。
 一日一回、巻物型の『プログレス』に魔法が記述されるというもの。

「さて、今回は……ハズレか。まあ、トレード用に残しておきますか──“スペルディスクライブ”」

 この『プログレス』の持ち主は、魔法を保存できるように成長させた。
 その恩恵に俺も預かり、引いた魔法のスクロールが得られる。

 今回引いたのは“巧性付与エンチャント・テクニカル”。
 一時的に、器用さの数値を高めるというものだが……それを使わずとも、生産中はカンストさせられる俺には不要だ。

 しかし、ハズレもいくつか集めれば、これまでに引いた魔法と交換できるようになる。
 少々時間は掛かるがスクロール化して保存しておくのが吉だ。

「まあ、それより何より、ガチャができるってのはやっぱり楽しいな。この世界だと、ガチャっぽいのを見たことが無いし」

 いずれ神様方に、ガチャの有用性でも語ってみるべきだろうか?
 もしかしたら、何らかの形でガチャを用意してくれるかもしれない。

「迷宮の報酬は、ある意味ガチャとも言えるだろうが……大量課金とか、連続引きとかができないのだが難点だしな。やっぱり、街中に置かれていると助かるな」

 そうこう言っている内に、スクロール化が完了して魔法を保存できた。
 後で『SEBAS』に渡して、大量複製で何度でも使えるようにするつもりだ。

 残念ながら、この増殖バグで無限に交換ができる……とはいかないがな。
 ちゃんとガチャで引いたものでないと、交換はできないので。


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