虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
目的探し その15
ジンリは街に仕込んだ非常時におけるアナウンス用の機械を使って、手配している。
俺を捕まえた者には大金を与える、それが街中に広まっていた。
「……はぁ、仕方ないか」
休人たちに追いかけ回されているが、正直そこはどうでもいい。
あの転移を封じる部屋から出た以上、俺は好きにここから脱出可能だからだ。
「おい、何をして──」
「悪いな。ここでそろそろお暇させてもらうとしよう──空間転移」
魔力も何も籠もっていない、見せかけだけの魔法を呟く。
その間に鞘に仕込んだ転移装置を動かし、空に向けて移動を行う。
今は『SEBAS』のサポートが最低限なので、いきなりは遠くへ向かえなかった。
なので一度誰も居ない空へ向かい、そのうえで時間を割いて再度転移を行った。
「──『空翔靴』っと。さて、これで足場は確保できた。長距離用の転移の設定をしておいて……これで良し」
俺はいつでも逃げ出せる、たとえどれだけの休人が俺を追いかけようとも。
ありとあらゆる『プログレス』は俺の手の中、加えて『生者』の権能まである。
さすがにそれ自体はジンリも知らないことだが、知っていることもあった。
それは俺がさまざまなオンゲーにおいて、どんな状態でも諦めなかったこと。
それゆえに、これもまた計画通りだろう。
あくまで、これからへの布石としてまず流布しているのだ──ツクルという男を、彼らが自然と外部に広めると確信して。
「俺の知られていることと言えば、光子技術で剣や銃を売り捌いたこと……それと、いくつか生産アイテムで成り上がっていることぐらいだな」
生産ギルドにおいて、特級会員になっているので表立って噂されることは無いけど。
技術は出した際に特許扱いされ、ギルドが保証するルートで取引できるのが利点だ。
この街はまだ完全ではない。
真上に結界が構築されておらず、侵入や脱出が容易なのだ……まあこれは、仕方がないとしか言えないのだが。
俺もアイプスルで街を創った際、結界の質や範囲を向上させようとしたらいくつか条件が課せられたからだ。
そちらは俺が星の主ということになっているのでだいぶ簡単だが、こっちの世界だと他との兼ね合いなどもあって、そう一気に強化することはできない。
「ジンリは……またいつか、今回と同じように何かしらの揉め事で会うんだろうな。それまでに、できることはできる限りやっておかないとな」
今回、『プログレス』を使っていなかったジンリ……これまでの元『渡り船』連中が強力な能力を目覚めさせていたことから、なんとなく厄介な予感がする。
特にアイツは、面倒な能力っぽいし……対策はどこまでやっても構わないだろう。
そんなことを決断し、俺はこの街から転移するのだった。
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