虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
目的探し その13
ジンリは『渡り船』において、実質的な代表だったと言っても過言ではない。
俺はランダムプレイで忙しく、ルリは我が道を行くタイプ。
他の奴らも曲者揃いの中、それらすべての統率を行っていた男だ。
そんな彼と今……魔道具越しとはいえ、再会できた。
「まさか、こんな所に居たとは……お陰で全然会えなかったじゃないか」
『代表こそ。なぜこの地を訪れない? ……いや、代表とあの女はすでに特異な行動をしていたか。実際、奴もまたここには来た記録が無い』
「そうか……似たもの夫婦って、なんかいい響きだよな」
『その意見には賛同しかねるな。お前たち二人が、いったいどれだけのゲーム会社に悪影響を及ぼしたのやら』
心当たりが無いわけでもない。
俺もルリも、なんだかんだで出す結果が運営にとっては修正パッチを用意しないといけなくなる場合が多かったからな。
その都度運営側は急ぎ、俺たちはオンゲーができなくなる。
俺たち(というかルリ)がやるゲームは、そのため良作が多くなっていたな。
「しかし、お前はどこに居るんだ?」
『この施設の最奥だ。つまらない作業ではあるが、退屈はしない……だが、そろそろなのではないか?』
「……そろそろ、とは?」
『無論、『渡り船』だ。すでに代表は、幾人かと接触しているはずだ。奴らも奴らで、あの女と出会ったがゆえに、相応の貢献ぐらいはできるからな』
ルリと会うと、誰もが何かしらの形で変化することになる。
それは俺も同じで、これまで再会してきた他の『渡り船』のメンバーも同様。
ついでにこの世界における、彼女の騎士団もそんな感じだ。
もともと眠っていた力など、彼女と出会ったことで開花したことだろう。
「……あんまりその言い方は好きじゃないんだがな」
『あの女も認めたことだ。代表がどのような感想を持とうが、関係のないことだ。それよりも代表……どうするんだ?』
「『渡り船』は電子の海を渡り、進む船。前に誰かがそう言ってたっけ? 俺もそのたとえが好きだ……ジンリ、お前は再結成したら何をするんだ?」
『決まっていよう。これまでも、これからも目指す場所は変わらない。最強の集団、そしてその最上に至るだけのこと』
ジンリは最強を望む。
だが本人に、それを行うナニカが足りないと自分でも自覚している。
故に彼はギルドやクランといった集団で、最強を目指すことを選んだ。
そこで彼自身が頂点に立つことで、最強と認識されるように……。
「──ダメだな。それにたぶん、ルリも断ると思う。俺はともかく、ルリがいないと何も始まらないぞ」
『……代表が納得すれば、あの女も加入するだろう』
「だからダメなんだよ。悪いな、また今度直接会お──」
『やはり、こうなったか』
背後で通路が遮られる音がした。
なんとなく予想は付いていたが、こうなるのか……さて、それでも話すか。
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