虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
目的探し その11
俺は都市に潜り込んだ。
まあ、後ろめたいことをやっている奴の中には、そういうことをしている者も多い……不法侵入もロールの一環だからな。
バレれば憲兵などを呼ばれるが、そうでないなら大目に見る。
それがこの街のルールであり、休人たちがある意味法なのだ。
「地図まであるのか……取り込んでおこう」
休人の権能である[メニュー]の内、移動した場所を自動で記録する[マップ]機能。
それは自分で行った場所以外にも、用意した地図を取り込むことで記載を増やせる。
内容が詳細であればあるほど、後で見返した際に情報を確認可能だ。
今回は、休人が用意したと思われる街案内の明るいパンフレット的な物を取り込む。
「ふむふむ、街の名前は『エッホ』……なんというか、まんまなんだな」
由来はこのゲームのタイトル、EHOから取ったモノなんだろう。
街自体はある程度、この西洋『風』の街並みに合わせた感じである。
ただまあ、少しずつ技術をこちらに持ち込むことで発展させ、自分たちのやっていることに違和感を与えないようにしているため、その片鱗が所々で見えるのだが。
「こういうの、本当なら反発があったりするのかもしれないけど……そうか、下地があるから問題ないのか」
そんな異なる世界の技術を受け入れられる理由は、単純にEHOというゲームでは無数の惑星間を行き来できるからだろう。
加えて、この世界は多くの『超越者』が居り、技術改革に寄与している。
……特に『機械皇』なんて、マジで産業革命レベルだからな。
「それに加えて神代魔道具もあるから、自分たちの技術で確立し得ないものでも、ある程度は許容できるんだよな」
魔力関連のファンタジー技術に比べ、科学に関する事象は説明がつく。
個人の才をあまり必要としないことが、受け入れてもらえる理由かもしれないな。
「ん? この建物……」
そうして街の中を探していると、とある場所に目が向く。
それは役所代わりの施設なのだが、そこに名称がついていた。
「『グランドシップ』……ふーん、行ってみた方がいいかもしれないな」
現実世界でもグランシップという名を冠した施設がいくつかあるが、スペル的にはそちらの方が正しい。
だがある知識を持っている者からすれば、むしろグランドシップの方が正しいのだ。
……EHOでは、いっさい出てこない単語ではあるが。
「誰がいったいここを造ったのか、それを探る必要が出てきたな……うん、目的がまたできて嬉しいよ」
やはり旅は良い、その先々でやりたいことが見つかる。
……オンゲーのチーム『渡り船』、この街に仲間を見つけるヒントがあるな。
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