虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

目的探し その09


 E4

 山を下りてしばらく、辿り着いたのはE1以上に広がる広大な草原だった。
 なんというか、感慨深い……これまで気になってはいたが、ようやく向かえるわけだ。

「たしか、この先のE5区画に造られたんだよな。その、休人の街というヤツは」

 アレはたしか、初めて仙郷に行って帰ってきた後に話題にしたことだったな。
 休人たちが見つけたセーブ石、それを設置することで死に戻りできるようにしている。

 そして、そこに新たな都市を創ろうと計画していたんだよな。
 それからどうなったのかは、必要じゃないため気にしないでいた。

「とはいえ、結局まだ先だしな……さて、誰にも頼らずに行ってみますか」

 うん、すぐに行く手段というわけでもないが、楽をしていく方法はあるのだ。
 視界の先に用意された小さな馬車に、その答えは存在する。

「まあ、初心者は当然ここに来るわけだし、片道でいいから利益も出るのか?」

 馬型の魔物に引かれて行けるのは、E5にある例の都市。
 そこで転移の登録をすれば、いつでも金さえあれば来れるようになる。

 なので初心者たちはお金を貯め、エリアボス討伐後にすぐ都市へ行けるように準備をするそうだ。

 交通費も少々お安めになっているので、大半の休人はここでお世話になる。
 ……ただ、世の中にはこんなことわざがある──『タダより安いものはない』。

「タクマもオススメしないって言ってたし、俺も好きじゃないからな──情報を売り介されるのは嫌だ」

 乗ったヤツは、その間に起きた情報のすべてを公開しても良いモノとする。
 まあ、そんな感じの書類にサインしないと乗せてもらえないのだ。

 乗ったヤツ限定、というのが嫌な部分。
 値段に負けて乗せてもらったヤツは、もれなくその存在を気づかれてしまうのだ。

「──『インビジブルクローク』起動」

 外套型となる『プログレス』を起動する。
 ただしこれ、普段のように状況に合わせてダウンロードしているものではなく、前に製作したアイテム組み込んでおいたもの。

 そう、便利な光学迷彩装置。
 本来は袖の無い外套になるはずだったが、それもアイテムに加工して取り付けることで頭の部分まで隠せるようになった。

「能力の一つ、隠蔽スキルレベルの共有と統合は使えないんだけど、それを補って余りあるだけの効果があるからなー」

 それが“アラートスルー”という能力。
 相手がこちらを認識していなければ、探知や看破といった便利なスキルなどに引っかからないというもの。

 隠蔽スキルを持たずとも、科学的に隠れることでその姿は認識されていない。
 消臭も予め済ませてあるし……ここを突破する間は、起動したままにしておこう。


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