虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

目的探し その08



「『アイアンゴーレム』、まあ初期の相手としては最適な相手だよな」

 ソロでの討伐はレベルが30もあれば可能だし、パーティーで挑めばより簡単だろう。
 加えて、ドロップ品には高品質な鉄鉱石が出て、武器の強化にも繋がるんだとか。

 なので初期の内に乱獲されており、いくつかの攻略パターンが確立されている。
 そうして初心者もより低いレベルで攻略をし、どんどん先のエリアへ進んでいく。

 別に無視しても俺みたいに先のエリアには行けるが、それが問題になることもある。
 休人限定のクエストとか、イベントに特定エリアの突破が条件になることがあるのだ。

「さて、倒すとしますか……」

『…………!』

「今じゃ『プログレス』も使えるようになって、初心者たちの討伐可能レベルが思いっきり下がったからな。討伐されすぎて、気が滅入っているのかもな」

 両腕を掲げる鋼鉄の巨大人形を見て、ふとそんなことを思う。
 そしてその腕を地面に叩き付け、大地を激しく揺らす。

 これは初期行動であって、初期行動ではない……正確には、何度も討伐された後から実装された行動パターンだ。

 EHOに登場するエリアボスは、嵌め技などがあると少しずつ学習する。
 最初の内は効いていても、次第に効果が失われていくのだ。

 昔はスロースターターというか、ボスの余裕というか……まあ、休人のレベルもまだ低めだったので、少しだけ戦闘開始までに時間があった。

 だが休人が強くなり、そんな時間も不要と判断されたのだろう。
 というか、その間に部位破壊が行われることが多かったそうだ。

「今じゃすぐにスタートだよ……まあ、それでも『プログレス』の多様性には、まだ対応できていないみたいだけど」

 さすがにボスを相手に、丈夫な剣一本だけというのは無理である。
 壊れるまでは起動を維持できるので、そのまま剣を構えて戦闘を開始した。

「──『スピードスター』起動」

 靴型の『プログレス』が足を覆い、俺の移動速度を高める。
 職業スキルの中から【見習い走者】が持つ加速スキルを使い、一気に駆け抜けた。

「速攻で悪いな──『リビングドール』」

 かつて『白氷』に渡した『プログレス』の片割れ、無機物を操る能力。
 そして、ゴーレムは無機物……対策ができていない今なら、これも通用する。

 操縦権を得たので、すぐにゴーレムに自虐行為を始めさせた。
 自分で自分の体に傷つけさせるなら、俺の攻撃力は関係ないからな。

「失敗したら別の方法もあったけど、一発で成功してよかったよかった。さて……時間は掛かるが操縦に専念しないとな」

 ボスは一定以下まで生命力が減ると、暴走モードに入る。
 そこまで行っても、『リビングドール』は解除されない──これで勝利は確定だ。

 ……そうして地味な闘いを繰り広げた後、俺は次のエリアへようやく迎えたのだった。


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