虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
目的探し その07
「貧弱すぎるがゆえに、剣技とかは全然なんだが……まあ、やればできるわな」
剣なのに鈍器みたく使い、ひたすら叩き続けることしばらく。
俺の目の前から、鈍色の蜥蜴が粒子と化して消えた。
「『ロックリザード』……だったのか。直訳すると、岩蜥蜴だな」
この世界的には、すでに一年越しの事実というヤツである。
わざわざ来ることも無かったし、鑑定も全然できなかった頃の魔物だしな。
だが今ならば、種族レベルを限界突破したうえでカンストしたご褒美がある。
膨大な情報が、すっかり忘れていたその魔物の名前を教えてくれた。
「さて、行きますか」
前回は臭いと音でやらかしたので、出来る限りこっそりと行きたい。
だが仮に隠形姿勢を取ったとしても、守護獣というものはそれを察知可能だ。
風兎曰く、少なくとも霊域であればどんな個体であろうと侵入者に気づけるらしい。
だがまあ、侵入者に勝てるかどうかは別とも言ってたっけ……『超越者』とかな。
「俺もレベルだけは無駄に高いし、そのくせ能力値が低いから狙われるんだよな。相手が怯えて近づいてこないというのも、なんだか憧れるんですけど」
威圧を行える『プログレス』もあるが、そちらは基本、『プログレス』のレベルを基準に行う仕様だったので、今はまだ使い物にならない。
魔力を解放することで擬似的な威圧を行う方法もあるが、そちらの場合俺はすぐに死んでしまうので事実上不可能だ。
「……本当、力を外に出すだけで死ぬってどこまで虚弱なんだろうか」
常人はそれに耐え得る体をレベルアップの過程で得ているので、普通に解放できる。
赤子とかには、そういう問題も生じるらしいな……俺は赤ん坊レベルなわけだ。
◆ □ ◆ □ ◆
空から襲ってくる鳥や、ゴーレムなどを剣一本で倒していく。
斬るのではなく、ひたすら叩き続けて倒す地味なやり方ではあるが。
「ふぅ……さて、この先にはエリアボスが配置されているんだっけ?」
休人たちにもっとも多く討伐されている、そんな謳い文句が付くほどらしい。
ちなみに初心者卒業は、その魔物を討伐してこそという者もいるんだとか。
「懐かしいな……これ」
正方形のキューブが、何もない宙で漂っている。
俺は昔のようにマジックハンドを取りだして、遠隔操作でそれに触れた。
「っと、来た来た!」
大気を揺らすほどの爆発が、キューブの中に籠められたエネルギーで行われる。
まあ、ここが初期地点に近いこと、すでに何度も討伐されたことで威力は弱いのだが。
実際、一番最初に出てくるエリアボスに限り強化されている。
それ以降は、すべて同じレベルなので……俺も初心者卒業試験に挑むとしよう。
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