虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

目的探し その04



 E2

 草原と旧森である林の中を進んでいく。
 だがここ、全然魔物が発生しなくなっている……それにもちゃんと理由がある。

 魔物とは周囲の魔力溜まりから発生し、ありとあらゆる生物に攻撃を行う。
 そしてその魔力溜まりは、生物が多く存在する場所に発生する。

「人族が住んでいる場所には、発生しないんだけどな。たしか……集団意識がどうとかって、『SEBAS』が言っていたな」

 ともあれ、基本的にそんな理由でフィールドにだけ魔力溜まりが生成された。
 だが森が一度失われたことで、この地には魔力を広める生命体が居なくなっている。

 植林をしている最中だが、それでも魔物が生成されるだけの魔力溜まりは未完成。
 そのため外部から安住の地を求める魔物ぐらいしか、ここには現れないのだ。

「とはいえ、だいたいは逃げてきた個体だからあんまり人族を襲うことは無いらしいな。意図して探す休人がいるから、ただこの先に行きたい奴らは気にする必要がない」

 虚弱過ぎる俺が歩いていても、魔物が何もしてこないのはそれが理由。
 知能が足りないため、本来なら本能の赴くままに襲ってくるんだけどな。

 先ほどは乱獲をしていた俺だが、わざわざ喧嘩を売るのもバカらしい。
 なのでそのままでいるつもりだったが……死亡レーダーに反応があった。

「そういえば、俺がいつも居る場所は全然休人が居ないもんな。もしくは圧倒的強者が居るか──『マルチプルセンサー』」

 死亡レーダーで分かるのは殺気の方向と危険度合いだけなので、『プログレス』を用いてさらに情報を集める。

 一定空間内での完全感知によって、敵の詳細を詳らかにしていく。
 ……なんだか久しぶりに、休人との対人戦が始まるよ。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 ドンッと強い衝撃が背中を襲う。
 能力値が貧弱すぎる俺は、それに抗うこともできずに倒れ込む。

 どうやら麻痺系の攻撃魔法を使って、身動きを取れなくしたようだ。
 圧倒的上位者には通用せずとも、この辺りで活動する初心者なら効くだろう。

 瞬時に死に戻りして無効化(?)した俺の下に、林の奥から誰かが近づいてきた。

「よっしゃ、今回も俺の物だな!」

「……い、いったい何が」

「おいおっさん、まだ起きてるよな? 名前は……エイト・・・か。とりあえず、俺のために死んでくれよ」

 名前は偽装し、鑑定されてもまったく異なる情報が出るようにしてある。
 そして、『深返の淵視鏡』の効果で相手の情報を把握可能に。

 まあ、名称限定の鑑定だったようで、俺が分かるのも相手の名前だけ。
 ……さてさて『ハッサム』君、この分の礼は高く付くよ?


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