虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

目的探し その03



 E1

 覚悟を決めないと……そう考え、再び俺は東へ歩を進めた。
 いろいろあったのだ、あれから幾星霜の時が経ったのだろうか。

「──なんてノリで言えるぐらいには、だいぶ精神的な安定感はあるからな。さて、魔物自体は俺でもギリギリ倒せるぐらいには成長したんだ……挑もうか」

 まあ、どんなものでも攻撃を喰らったら即死なのは変わらない。
 減衰とかシステム的なモノは関係なく、本来俺の生命力HPは1以下の虚弱スペック。

 なので体に衝撃が走るだけでも、それは死という判定を受けてしまう。
 弱すぎるので、それは仕方ないんだが……虚しくなるよな、虚弱だけに。

「笑えないか──『ゴーストボディ』」

 念には念を、物理無効の『プログレス』を起動して体を半透明にする。
 この初心者フィールドに出てくるのは、そのすべてが物理攻撃しか持たない魔物。

 ──約束された勝利の能力なのだ。

「派生で“ソウルイート”、経験値を乱獲だな……1が2になる程度だけど」

 圧倒的レベル差、そして能力値の差もあって貰える経験値は初期より減っている。
 生成した鎌の効果で取得経験値に補正が入るが、それでもほんの少しだろう。

 いちおう職業には【見習い鎌士】、そしてこの『プログレス』を鑑みて磨いた【鎌士】の二つに就いておく。

 職業スキルの中には、武術スキルとは別に鎌の扱いを良くする補正能力があるからな。
 お陰である程度、鎌を使っても戦えるようになったのだ。

 そうして鎌を振り回せば、ウサギだろうがスライムだろうが何でも倒せた。
 得られる経験値はやはり微量だが、そもそも種族レベルはカンストしている身。

 職業能力を常時発動可能にするためには、まあ経験値はまだまだ必要なんだけども。
 なのでこちらに近づいてくる魔物は、容赦なく屠っていった。

「草原をしばらく行ったら森……いや、元森に着くな。だいぶ植林とかやったみたいだけど、完全な状態にはまだ先だろう」

 そこはかつて、森獣という存在によって守護された生物たちの楽園。
 だが、現在その守護者が消えたことで恩恵は失われた。

「まあ、守護獣が消えたから森が無くなったというより、森が無くなったから守護獣が新たに生まれなくなったって感じか」

 そして、その原因の発端には、俺の行いが大きく関わっている。
 子供たちに胸を張れる大人でいるために、今さらながら二度目の功罪をすべきだろう。

「これもいちおう、候補の中には入れておこうか。いやまあ、ずっと前からある意味決めていたんだけども」

 ──まさか誰も思うまい、悪臭が世界を大きく動かしたとはな。


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