虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
目的探し その02
冒険世界 始まりの街
いつもなら相談しているだろうアイツは、初期地点を訪れていなかった。
それもそのはず、少し前のアイテム実験で強制送還されてから監禁されているからだ。
別に彼女は、仕事をしないわけではない。
むしろ遊びに来るのは、絶対にやらなければならないことを済ませたうえで、それから脱走しているのだ。
「……まあ、相談してばっかりというのもアレだろうか。目的探し、というか自分探しは自分でやることだし。いや、別に誰の助力を求めてもいいし、そもそもルリのアイデアで探し始めているんだけど」
一人ツッコミをしても、誰も気づかない。
結界の中には存在を隠蔽するモノもいくつか存在し、術式は俺を包む結界の中に組み込まれている。
「とはいえ、ここで何かできることと言えばアレだな。納品、そして贋作売り……」
前者は毎度お馴染み、生産ギルドへ売り捌いているポーションのこと。
そして後者は、【贋作者】関係で何度か試したアイテムの販売だ。
どちらもそれなりに利益を得ているし、一度としてクレームは来ていない。
……まあ、品質が良すぎてきたクレームをカウントしないのであれば、だが。
いずれ【贋作者】系統の最上位に位置する職業が、就けるかもしれないと信じて。
まだ誰も就いていないようなので、ゆっくりと条件を満たしていくつもりだ。
どうせどれだけ条件を満たしても、最後には絶対やらなければならないことがある。
そちらはほぼ達成不可能なので、今はまだ期待をしているだけだがな。
「すでに定期便を出しているから、もう前者はしばらく必要としない。後者は……そもそも、気が乗らないとやらないからな」
贋作品を用意するということは、誰かのアイデアをパクるということ。
それをするのは、それをしたくなるようなアイテムであることが好ましい。
実際、そういうアイテムはいくつか存在している……別に俺が生産者のトップというわけじゃないし、この世界の人々が作るアイテムの中にもそういうモノは存在する。
「ただまあ、特典の贋作は楽しいな……アレは本当、どれだけやっても飽きないし」
ネームド種やユニーク種を討伐した際、一名だけが得られる特殊なアイテム。
それは必ずその討伐対象が有していたナニカを継承しており、それがだいぶ強い。
たまにそれを持っている奴らを見かけるので、解析して情報を集めている。
そして、持ち得る技術すべてを用いて、その再現を行っているのだ。
まあ、現状では:DIY:の補助なしだとできないんだよな……というわけで、これもやはり無しである。
──本当、いったい何をすればいいのか。
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