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虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

やりたいこと



「まあ、アイツとはいずれどこかで会うからいいんだ。問題は、今の俺にやりたいことが見つからないことだな」

「それは大変ね。うかうかしてたら、子供たちに抜かれるわよ」

「抜かれるって……能力値的にはもう完全敗北しているんだが? まあ、レベルに関してはまったく負ける気がしないけど」

 俺の能力値は三桁、しかし子供たちはもう四桁台も後半ぐらい。
 レベルは上がりづらいので、まだまだ頂である999に辿り着いてないようだが。

 いずれは到達すると思う。
 しかし、たとえ追いつかれても純粋な能力値の勝負では今の時点で大敗しているので、今さら気にすることなど何一つ無かった。

「種族の方のレベルアップは見込めない。最近、生産特化の【勇者】に就いたんだが……そのレベリングもだいぶキツいから、それだけを目的にするのは無しにした」

「私も【神聖女】のレベルアップは大変ね。一定レベルごとに、何かしらの条件を満たさないと上がらなくなったもの」

「そんなシステムが? ちなみに、挙げられる範囲としてどんなものがあるんだ?」

「そうねぇ……信仰値? が一定以上とか、その純度向上とかだったかしら?」

 瑠璃のことだ、そこまで気苦労せずともすぐに満たせただろうな。
 彼女の振る舞いは、ほぼすべての人々に幸福をもたらしているから。

 俺も俺で、しっかりと祈っているはずなんだが……LUCが0だからか?
 正直、神の恩恵というモノを:DIY:以外で強く感じたことは無い。

「こういうとき、家族で何かをやったら盛り上がるんだが……これは俺のエゴだしな。二人とも、今はクエストの佳境だって言っていたから、付き合わせるわけにはいかないし」

「私も今は復興事業に参加しているから、あまり離れたくはないわね。『超越者』に挑んだ影響で、辺境の村が大変なのよ」

「……あとでポーションを送っておくよ。ついでに食料も」

 家族の座標に合わせ、転送陣を出す仕組みは初期から確立している。
 今は直接[アイテムボックス]に送信することもできるので、こういうときは便利だ。

「しかしまあ……本当に何をしようか」

「うーん、何かやってみたいけどやらなかったこととか、そういうものはないの?」

「やらなかったこと……」

「何でもいいから、そういったものを思い出して試してみるのはどう? それだけで調べることはできるし、何か新しくやりたいことが見つかるかもしれないわ」

 瑠璃にそう勧められ、とりあえず何かないか探してみることに。
 うん、とりあえずやりたいことを確保できたな。


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