虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

固定ダメージ



「とはいえ、生産でもしっかりと経験値が溜まるようで何よりだ。『騎士王』に違和感をあまり抱かせないために1.1倍のままにしていたが、もう意味も無いしな……頼む」

《畏まりました。レベルを向上させます……5、10……停止しました。やはり必要経験値は、それなりに多いようです》

「それでも生産で、しかもこっちは:DIY:も許容してくれている分だけ楽だろう。しかも、いちおう生産の【勇者】って系統だから必要経験値も減っているみたいだな」

 驚異の強化幅を持つ職業能力は、ここまでに貯めた経験値を注いだら一気にパワーアップすることになった。

 1レベル向上で10%強化されるので、今回のレベル上げで200%補正だからな。
 普通に考えるだけでも、2倍になるのはだいぶ使えるのではないだろうか。

「ポーションの効果が倍加する、それを求める戦闘職がどれだけいるのやら」

《効果は付与してしまえば、恒常的に発動可能ですので。旦那様さえその気になれば、彼らにもその恩恵を享受させることは可能になるでしょう》

「……まっ、現状俺にしかできないことなんだから、何かしらケチが着くだろう。しかもこれは職業能力、技術じゃないオンリーワンな今はやりたくないな」

 俺個人しか就けない職業というわけでもないし、誰かが同じことをできないとは言わないんだが……それでも、【勇者】から生産特化な【生産勇者】を選ぶモノは少ない。

 つまり、この倍化は技術化できない俺個人のオリジナルとして認識される。
 俺を独占すれば……とか、そういうロクなことにならないように振る舞わないと。

「ダメージ量、成功確率、固定量とかの強化も可能なことは確認済み。だが、これは間違いなく金に……力になることだから、あんまり広められないよな。俺の現状と同じく、固定1ダメージなんてアイテムもあるし」

 今の俺がそれを強化しても、2ダメージしか与えられないのでそこまで強くない。
 だが、最大レベルである100まで達したら……固定で100ダメージである。

 まあ、基本的に強い奴は四桁や五桁が当たり前なので意味無いんだけど。
 それでも、三桁台の奴ならすぐに倒せるようになるだろう。

 その中には、非常に経験値が多く貰える代わりに異様な防御能力を持つ魔物なんかも居るわけで……うん、乱獲されるようになってしまいそうだ。

「プラチナとか、メタルの王様レベルなら生き残りそうだけどな……問題はそれ以外の用途で、そんな固定ダメージに使い道を見出す奴が現れることだな」

 それさえあれば、必ずどんな相手にでもダメージが与えられる。
 それは工夫ができれば、どんな相手にでも勝てるということ……改めて考えないとな。


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