虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
生産勇者 後篇
「:DIY:に固執していたら、使えなかっただろうな……よし、追加分も出来上がりだ」
検証でかなりのアイテムを消費したので、新たに作り直す。
一度に大量に作ることで、大量生産ボーナスなんかを受けて高品質にできていた。
すべて自分の力で製作したので、ちゃんと【生産勇者】の能力対象に指定できる。
武器から回復アイテムまで、その対象は多岐に渡る……それでも、自分で作った。
「起動させなくても万能生産スキルとして、どんなアイテムでも作れる効果が無かったらできなかっただろうけど……まあ、ともあれ最低限は準備ができたな」
《はい、さすがは旦那様です》
「本当なら、『死天』アイテムも加工出来たらよかったんだけどな……劣化加工ならともかく、強化の方はまだ無理だったか。そういえば、まだ試したことが無かったっけ」
生産職は粗方カンストしているが、それでも現状の職業スキルだけでは『死天』が死因から生みだしたアイテムを加工できない。
例外は:DIY:を使ったときのみ。
創造神の御業をごく一部、俺でも使える範囲で押し込めた能力だからこそ、運営関連の代物でも手を加えることができるのだろう。
「……ふぅ。ともあれ、これにて検証は終了だ。あとは報告しておくか。【勇者】も見抜けたぐらいだから、多分会っただけで気づかれるだろうし」
《では、いつもの準備をいたしましょう》
「ああ……なんとかして出し抜けないかな」
今回作ったアイテムの中には、それが可能かもしれない物も用意してある。
だが、それでも難しいかもしれない……相手は本当、理不尽の権化だからな。
◆ □ ◆ □ ◆
冒険世界 始まりの街
「──【勇者】を新たな道……いや、異なる変化を遂げさせたようだな。『生者』、いったいどのような力なのか?」
「さて、たまには当ててみたらどうだ? ほら、こういうヒントも用意してある。クイズスタートだぞ、『騎士王』様」
「! そ、それは……脅しのつもりか」
「さて、何のことかさっぱりだよ。それよりもこれ、とっても使い易そうだろう?」
そういって、ゆっくりと指を動かそうとすると……物凄い勢いで動く。
だが俺も負けじと、今回製作したアイテムで対応する。
障壁を展開する魔道具に、魔力を追加で供給して“自産直装”を発動。
通常よりも性能を上げた障壁画、彼女の突進を防……げなかった。
まあ、今はまだ1,1倍でしかないので、もともと突破されていた障壁じゃ守れない。
だがそれでも、それはちゃんとヒントになる……少しだけ『騎士王』が冷静になった。
「……ほんの僅かだが、これまでの物よりも抵抗が強かったな。術式の変化というわけではないだろう、それが能力か?」
「察しが良すぎるだろう。まあ、正解だ」
「そ、そうか……ならば、そろそろそれをこちらに渡してもらっても──」
「いやいや、そうはいかない。ちゃんと答えに辿り着いたわけじゃないからな……というわけで時間切れ、ポチっとな」
あっ、という声は一瞬で掻き消える。
今回はその思考の分、対応するための時間が足りなかったな……ちゃんと予定は聞いている、だからこその強制送還であった。
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