虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

生産勇者 中篇



《“自産直装”はパッシブとアクティブどちらの能力でもあります。制限解除が前者、能力強化が後者となります》

「それはなんとなく分かるが、どういう風に使えばいいんだ?」

《アイテムを使用する前に、一定量のエネルギーを供給します。基本的には魔力を送ることで強化可能ですが、一部のモノは生命力や精気力となります》

「それはどういう風に分けられている?」

 解説によると、生産時にどのエネルギーを使うかで決まっているそうだ。
 大半の生産では、たしかに魔力だけで充分だからな……。

 精気力を使うモノには、煉丹術という錬金術の仙術版みたいな技術がある。
 アレは仙丹を生み出すために、精気力を使う必要があるからな。

 生命力を注ぐ生産アイテムも、いくつか俺は把握している。
 ……妖刀とかには、思いっきり注がないと完成しないぞ。

「まあ、それを全部試すのはまた別の機会にしようか。『SEBAS』、能力を発動してどれくらいの強化になるんだ?」

《強化幅はレベルで上がりますが、現状では1.1倍が限界となります》

「単純計算なら……最大100まであるから十倍まで行くか? まあ、とりあえずやってみよう」

 あえて:DIY:は用いず、手抜きの生産で作ったのはマジックポーション。
 魔力が回復する薬を飲んで、その量に差がないか試すつもりだ。

「検証開始だな。職業もそれ関係のモノにした方が良いか?」

《いえ。最初は【生産勇者】のみでお願いします。その後、他の職業や『プログレス』とのシナジー効果を検証いたします》

「了解。それじゃあ、トコトン調べてくれ」

《畏まりました》

 そんなこんなで、さまざまな条件を課して検証を始めていく。

  ◆   □   ◆   □   ◆

「──生産時に使った魔力と、同じ分だけ注ぐことができるみたいだな。ただし、レベル制限で倍率が1.1倍より上になる量は注ぐことができないと……」

《あくまで、旦那様の用いた魔力に限定された許容量のようですね。質の高い薬草で作ったポーションも、低品質の物でも同じ限界量となっておりました》

 検証を重ねた結果、いろんなことを知ることができた。
 特に重要なのは、俺自身のエネルギーが供給されていなければ使えない点だ。

 つまり加工にいっさいエネルギーを消費していない物には、発動できない。
 そして、その非対応には:DIY:のエネルギーも含まれているようで……。

「さすがにシステムも、そこまでチートの限りは許してくれないわけだ」

《『プログレス』そのものの強化も失敗してしまいましたね》

「まあ、それでもアイテムの性能強化はそれなりに使える。『死天』製のアイテムを加工するだけでも、結構チートっぽいしな」

 できないことも多いが、もともとできないのだからそこは割り切るしかない。
 できることを受け入れて、そこからやれることを考えていこう。


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