虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

生産勇者 前篇



 俺はEHOにおいて、初期からずっと変わらずに同じ職業へ就いている。
 まあ、ある意味強制だったんだが……その職業能力に、他職体験が可能なものがある。

 そうしていろんな職業に就いて、経験値を稼いでレベルを上げていた。
 いくつかの職業をカンストさせてきたが、今回のものは……とても感慨深い。

「ようやく……ようやくカンストした」

《【勇者】のカンスト達成を確認。おめでとうございます、旦那様》

「長かったな……まあ、“職業強化”も含めるとまだまだ先のことだけど」

 ついにレベルが100になった【勇者】。
 どうやら、『プログレス』を配る旅はかなりの経験(値)として、深く体に刻み込まれたようだ。

「それで、何か変化はあったか?」

《【勇者】の進化先には何も。カンストのみでは、条件を満たせなかったのかと。また、派生先にも変化はありません。【生産勇者】のみが、残っております》

「まあ、もともと【救星者】なんてチート職業に就いているわけだし。これ以上の無茶はやらなくてもいいか……『SEBAS』、とりあえず就いておいてくれ」

 残念ながら進化先はまだ見つかっていないようだが、すでに【生産勇者】という派生先に関しては確保してある。

 先が無いなら、別の道に進んでみればいいだろう。
 同じ【勇者】系の職業なので、経験値は共有できるだろうから……うん、イケるか。

《では、そのように──“職業系統樹”を起動、職業を【生産勇者】に設定……成功しました。職業スキル(自産直装)を獲得、代わりに職業スキル(勇者ノ卵)を喪失しました》

 時々使ってはいたが、そこまで重要とも言えなかった【勇者】の職業能力。
 それを失った代わりに得たのは、新しく就いた【生産勇者】の力。

《“自産直装”の能力は大きく分けて二つ。一つは自作アイテムに付随する、レベルなどの使用制限解除。もう一つは装備枠の拡張、及び性能の強化となります》

「前者は:DIY:が最初から備えている能力だから微妙だけど……後者は有用だな」

 ありとあらゆるアイテムを生み出すことができる:DIY:なので、それを最低限使えるようにしてくれていた。

 ちなみに制限はレベルの他にも、就いている職業や称号の有無などが存在する。
 当然、種族や性別などもある……大きすぎる鎧を妖精が装備できない感じだな。

 さて、後者の枠拡張と性能強化。
 これは:DIY:でもサポートしてくれないものなので、どれだけあっても大歓迎だ。

 ──使いようはいくらでも浮かぶ、さっそく試してみなければ。


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