虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

超越の手段 後篇



「毎度あり。要は『超越者』になるため、殺害による継承を狙っているわけだ」

「……ソイツら、バカなんじゃないか?」

「かもな。俺はお前からどういう奴らかを軽く聞いているから分かるけど、傍から見れば凄い連中ってだけしか知られていない」

「これまでそんなバカな連中を相手に、勝ち続けて……いや、生き残り続けてきたからこその『超越者』なのにな。『プログレス』程度で勝てるなら、誰も苦労しないだろうよ」

 前に『拳王』が、『プログレス』保持者と接敵したという話を聞いている。
 決して『超越者』自身に、『プログレス』は使うことができない。

 それでも彼は圧倒的な力で捻じ伏せた。
 当然と言えば当然のこと、アウトローな街の最強の武力は、何でもありな戦いでこれまで戦い続けてきたのだから。

「そもそもだぜ、『プログレス』だってある意味多様性のある魔道具だ。それに類似する魔道具が無いわけじゃないし、作れないわけじゃない。神代って単語が絡むアイテムの中には、それ以上の代物だってある」

「あの街そのものが神代のアイテムだって聞いたときは、だいぶ驚いたもんだな。そういえば『プログレス』にも、そういうエリア生成系の能力があるんだったか?」

「まあな。たしか、『マイルーム』とかいう能力だったな」

「……本当、『プログレス』の能力情報も売る気は無いか? 今ならだいぶ売れるぞ」

 冗談交じりの提案だったので、それはきっぱりと断っておく。
 そして、本題に……最弱の『超越者』たる俺も、知らなくてはならないだろう。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 始まりの街

「……『生者』か」

「状況は?」

「ハッキリ言って、何も問題ない」

「問題ないのかよ」

 いつものありふれた会話。
 だが、そこに気力は欠けている。

「だが、いずれ変化が生じる。絶対も、無敵も存在しない。『生者』、お前がありとあらゆることを成し得られないのと同義だ」

「……お前が負ける姿なんて、俺には最初から想像がつかないんだけどな」

「私が敗北するとき、それは星を蝕むナニカが勝つときだけだからな。もしくは、いずれ死ぬときだけだろう」

「後者はともかく、前者はどうだろうな。いや、時間を飛ばして殺すって考えもあるか」

 どうせ突破されそうだから、意味はないと思うけど。
 ともあれ、彼女──『騎士王』に敵う存在など居ないわけだ。

「何かいい策は無いだろうか?」

「まあ、今回の件は俺が引き起こしたと言っても過言じゃないからな。全面的に協力させてもらおう」

「そうか……ならば、来い」

 差し出された手を、俺は掴む。
 そして、俺たちはその姿をこの世界から消し去った。


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