虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
超越の手段 前篇
「それで、結局どうなったんだ?」
「いや、何がだ?」
「何がって……お前最近、人様に配り歩くとか言ってただろ。お前のせいで、暗躍街もだいぶ改革が進んでいるんだぞ」
いつもの報告の時間。
我らが情報屋こと拓真から、情報を聞き出してたり聞き出されたりしている。
手を出すのは、と気にしていなかったのだがだいぶ揉めたのだろうか。
少なくとも拓真の目は、そりゃあもう普通の雑談という感じではない。
「そういえば情報屋は中央域で営んでいたんだっけ? 結局、どうなっているんだ?」
「例の【非業商人】が宣言をして、他の領域の奴らが賛同した。流通が巡っていって、中央域に行けば何でも買えるようになった……少しお高めだけどな」
「高め? 他にはどんな変化が」
「まあ、移動の規制緩和とか各施設で情報を共有とかだな。犯罪者リストとかもリンクされたから、どこかでやらかして別の支配領域に逃げる……なんてのも無理らしい」
俺はまったく知らなかったが、これまではそういうこともあったらしい。
例えば『賭博』の場所で姦淫を働き、そのまま【奴隷王】の庇護に入る……とか。
まあ、あの人は基本的に美女なら誰でも受け入れそうだしな。
しかし先の件以降、そういったことも許されなくなったらしい。
「とはいえ、以降の話だから匿った犯罪者は逃げ場を失った。ある意味、庇護下に入った勢力に従属しないといけなくなったわけだ」
「……そこまで考えたうえでのことか」
「多分そうだろうな。【非業商人】は金さえあれば何でもやる、そういう男だからとそこに逃げた奴もかなり居ただろう」
「まあ、学んだんだろうな。金で切れない縁も作れて、それを繋ぎ続けられるって」
まあ、金で切れないからって、綺麗な関係というわけでもないけど。
どんな関係であれ、繋がること自体に意味がある……そういうことなんだよな。
「他には?」
「他か? まあ、『拳王』と『賭博』が組んでコロシアムを経営するようになったし、他にもいくつかの支配者たちが利益を共有するようになったな」
「そこは予想できてたな」
「あとは……『超越者』、に関する話だな」
ビクッと体を震わせる。
大まかな情報は拓真にも教えてあるし、そもそも暗躍街にはかなりの『超越者』が居るのでいずれそうなることは分かっていた。
だが、今さら『超越者』の何を話題とするのかがさっぱりである。
もしかしたらこれも、世界が少しずつ変化している証拠かもしれない。
──『プログレス』はいったい、どこまで影響を及ぼすのだろうか。
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