虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
ヘルヘイム その06
瘴気の霧の中を、『SEBAS』お手製の対吸生結界で防いで進む。
いずれ来るであろう、最悪の相手に警戒を怠ることなく。
「黒霧はだいぶ楽に対応できるようになったな。例のヤツ、見つかったか?」
《いえ。ですが、最奥が確認されました》
「ようやくか……それはつまり、例のヤツらとも相対さないといけないのか」
前回の場合、最奥に眠っていたレムリアに近づいたことで罠が作動した。
なので今回、最奥に鍵の人族が眠っているのであれば……同じことが起きるだろう。
起こさないのであれば戦う必要は無いし、策を講ずれば避けられる可能性もある。
だが、ヤツは存在自体を否定しなければ、安寧など生まれないのだ。
相容れない関係、それは多くの人々が共通認識とも呼べるレベルで持つ嫌悪感。
幸いにして、我が家はルリの御業によって発生していないが……外は別。
ショウやマイには、俺と同じ思いを体験しないでもらいたい。
大人のエゴなのだろうが、それでも俺はヤツらを駆逐するまで止まる気が無いのだ。
「前回よりもアイテムは揃っている。殲滅はより簡単になっているはずだ。メカドラ、お前も手伝ってくれよ」
『ギャゥ……』
「無意味な戦いが嫌なのか、それともお前も戦いたくないのかは分からない。だが、これも俺の戦いだ……やってくれるか?」
『ギャゥ……ギャウッ!』
現在、腰に提げた『機銃[龍星]』が咆えて応えてくれる。
ヤツらを屠るため、使えるモノは何でも使うさ……これは戦争なんだからな。
◆ □ ◆ □ ◆
最奥と思わしき地点は、特濃の黒霧が覆っているため何も確認できない。
だが、それは普人族の低スペックな視界の話……機械の瞳は真実を映し出している。
《封印は結晶を用いた代物で、内部の時間が停止しているようです。生命活動が外界から隔絶されるため、実際に認識できない限りは反応を感じ取れないのでしょう》
「なるほど、そういうことだったのか。なら俺にできるのは、解除することだけだな……駆逐してやるよ」
近づくことで、トリガーは引かれた。
ただでさえ濃い黒霧が突然さらに増え、それらが生物を模っていく。
「……来たか」
《旦那様、一つ至急の報告が。どうやら、冥界ごとに発生する生物が異なるようです》
「…………なんだって?」
いきなり、駆逐のモチベーションが失われてしまう連絡が。
死亡レーダーの反応は膨大、少なくとも質で勝負する強大な相手では無いはずだ。
──ならばいったい、出てくるのはどんな存在なんだろうか。
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