虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
ラグナロク後 その07
アインヒルドの料理については、また別の機会になんとかしてみることに。
いずれ料理系の『プログレス』の中に、都合のいい能力なんかが生まれるかもな。
さて、間もなくラグナロクの宴も幕を閉じることになるそうだ。
料理で気絶した者が多かったが、誰もが楽しそうにその終わりを迎えている。
「アインヒルド、お疲れ様です」
「ええ、貴方も」
「俺はただ死んでただけだしな。アインヒルドの方こそ、いい能力を発現させたな。これからも、俺の研究に協力してくれよ」
「そういう契約ですしね。はい、契約が途切れない限りは」
手を繋ぎ、握手をする。
その握力に関係なく、本来は体がダメージで死ぬのだが、柔性を帯びた結界を薄っすらと纏うことで対処した。
「『プログレス』の宣伝もできたし、利用者も一気に増えた。別世界に行くと、その分数も増えるな」
「──はい、どうやら御主人様はこの地でも布教を成されたようですね」
「! な、何者ですか!?」
アインヒルドは突然現れたその存在に、すぐさま武器を展開して構える。
どうやら俺を守ってくれているようだが、対するこちらは平然としていた。
「アインヒルド、コイツは神族だ。ただ、別の世界のだけどな」
「プログレスと申します。よろしくお願いします、戦乙女様」
「こ、これはご丁寧に……プログレス? それに、なぜメイド服を?」
最も新しき神族であり、『プログレス』を司る存在。
どの神話にも属さない女神は、なぜかこの地に君臨する。
「御主人様によって、『プログレス』に関する認識がある程度広まりました。故にこうして、こちらの世界にも訪れることができるようになりました。なお、メイド服なのはご主人様の趣味です」
「『生者』……」
「違う、誤解だ。俺も会ったときから、ずっとこの格好だった」
「こちらを訪れた理由ですね。はい、ご主人様の眷属神である私ではありますが、それと同じくして神々の使徒でもございます」
俺が指示をしたわけでもないので、誰の仕業なのかはだいたい察した。
そして、プログレスの放つ神気を感じ取って他の神族──北欧神話の者たちが現れる。
「ふむ……其方がプログレスであるな。話は聞いておるぞ」
「こちらの世界の主神様ですか。わざわざ丁重なお出迎え、ありがとうございます」
「『生者』により、プログレスの存在と神へ届き得るという認識が広まった。そのことに関する話じゃろう?」
「そのように伺っております。では、御主人様。私はこれで」
彼女とオーディンの爺様は、共にどこかへ転移で消えた。
二人がいったい何を話すのか……まあ、後で聞けばいいか。
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