虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―
ラグナロク後 その05
「何が狙いですか?」
「見ての通り。誰にでも焼きそばを作っているだけなんだがな」
屋台を使って、皆に配っていただけなんだが……アインヒルドの訝し気な目は、俺が何かしていると確信しているようだ。
──まあ、合っているけどさ。
「生産職のスキルには、他者からの評価を糧に経験値を得られたり、生産活動中の補正を与える能力があるからな。ここでなら、結構荒稼ぎできるだろう?」
「……生産者がそのように振る舞うのは、当然ですか。しかし、貴方がそれを行っているという事実に驚きを覚えます」
「まあ、生産職はカンストしているし、補正も俺には不要なんだけどさ。こういう祭りの時ぐらい、楽しみたいし楽しませたいんだ」
意味があることだけを行う。
そんな効率だけを極められるように、人はできていない。
時には無意味や非効率であろうと、そこに満足感を得るために行うような存在だ。
なので今回、祭りという絶好の機会にはっちゃけてみました。
「そうだ、せっかくだし手伝ってくれよ」
「わ、私がですか?」
おや、なんだか近くに居た戦乙女や英霊たちがざわついているな。
なんとなく、予感はするが……逆に面白そうだし、進めてみよう。
「作れないなら、売り子だけでもいいが……ダメか?」
「だ、ダメとは言っていません! ただ、私は普段から厨房への出入りが……その、禁止されていますので」
「せっかくの祭りなんだ。こういうときぐらい、ハメを外してもいいんじゃないか? それにだ、これは屋台だ。厨房じゃない……もう分かるだろう?」
「そ、そうですよね。貴方もたまには、イイことを言います……ええ、はい。やってみましょう!」
さて、逃げようとする戦乙女や英霊たちを結界で確保。
実験も兼ね、その他の存在も『龍王』がかつて俺に使った無数の結界で捕えてみる。
逃げる者たちの反応から、多くの者がすべてを察したようだ。
念のため、戦乙女の一人と目を合わせてみる……ああうん、やっぱりな。
「ちなみに、理由は聞いたのか?」
「たしか──『貴女の料理は独創的』、『少し……少しだけ味付けが人と違う』と言われましたね。味見をしろと言われますが、いつもちゃんとしているんですよ?」
「……そうか」
うん、最悪のパターンである。
メシマズなのに、自分の味付けの酷さに気づくことができないタイプなのか。
ちなみにルリは普通に料理が上手い。
メシマズ属性持ちは下手なアレンジで失敗するが、ルリの場合はそれが成功する……本当、天に愛されていますよね。
だが、そうはいかないからこそ、世界にはメシマズという概念が存在する。
アインヒルドはどうやら、そういった類の戦乙女だったようだ。
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