虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

ラグナロク後 その04



「──まあ、しばらくは後回しだな」

 いかにもな台詞を『SEBAS』と考えて言ってはみたが、結局調査をしてもらってから実行する予定なので、俺がすぐにやるべきことはない。

 とりあえず今は、ラグナロク後の宴会を楽しむことにしよう。
 時間帯はすでに夕刻、死者たちが蘇って宴に参加していた。

 ヴァルハラは特殊な小世界で、たとえ死のうと夕方になれば生き返ることができる。
 休人でなくとも、それができるというのはかなりの利点ではないだろうか?

「だいぶ酔いが回っているみたいだな」

 神様用のお酒を配りまくった俺だが、何度も死に戻るので酔いはリセットしている。
 それ以前に、酒の成分が悪かったからか酒自体で死んだりもしていた。

 なので冷静な視点で、周りが盛り上がっている様子を眺めている。
 そして、あることを思い付いてさっそく実行に移してみる。

「簡易屋台──展開」

 魔道具として圧縮しておいた屋台を、ワンタッチで用意した。
 その物珍しさから集めってきた者たちの前で、[ストレージ]からアイテムを出す。

「それじゃあ、今から料理を作るぞ! 欲しかったらここに並べ!」

「おい、何を作るんだよ!」

「何って……どんな奴でも食べられる物だ」

 現在、ラグナロクの会場であるヴァルハラには多種多様な存在が居る。
 普通の人族は俺だけ、他は死者だったり神様だったり……巨人なんかも居た。

「よっそっほっと……」

 タイミングよく食材を引っ繰り返し、ドバドバと真っ黒な液体を零す。
 それが焼けた匂いが当たりに漂うと、周囲の者たちがそれに反応して……寄ってくる。

 後は簡単だ、パフォーマンスをしながら料理を完成させるだけ。
 あとは向こうから、その連鎖効果で集まってくる。

 現在、料理をその場で作るという行為はここでしか行われていない。
 戦闘中に料理は用意されており、ルーンで保存されていたのだ。

 わざわざ料理を作ることで、客はどんどん集まっていく。
 そして、その中には巨人なども含まれているので──見せる。

「それじゃあ、行ってみよう!」

『おぉーーッ!』

 大きな鉄板の上でジュージューと焼けていくソレに、これまた大きな素材を入れてはかき混ぜていく。

 ただ、これは自分ではできないので、すべて『ミラクルハンド』と『ワンダーハンド』で持ち上げてやっています。

 それ以外はすべて他の種族用の料理と同じように、盛り付けて配っていく。

「──はいよ、焼きそばお待ち!」

 誰もがその美味さの虜になっていく。
 やはり、祭りといえばこれに限るな……お陰で俺も得をしているよ。


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