虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
ラグナロク後 その01
ラグナロクは幕を閉じた。
……まあ、まだ続いているけども。
だが俺は自主的に退場を選び、ゆっくりと観戦することを選んだ。
そちらの方が、いろいろと面白そうだという考えもあるし。
「それで良かったのかのぅ?」
「能力自体は俺がどこに居ても機能するし、実際あれ以上は邪魔だっただろう。俺がやりたかったことは全部済ませた。絶対に倒せないチートキャラを退場させる、それで満足しておくべきだ」
「……なるほどな。儂と戦い、その情報を集めたうえで舞台から退場させる。それこそがお主の目的であったわけか」
「いつまでも頂点に居るなんて、そんなつまらないことをするからだよ。自分が戦いたいからって粘り過ぎなんだよ」
酒や食事を酌み交わし、ラグナロクを観戦しながら話していたことだ。
主神としていろんなことをやっているストレスを、この場で発散しているらしい。
俺も戦闘プログレスを、真の武神を倒せる域まで成長させられた。
おまけにいくつかの神器の情報、それに特殊なルーンを学ぶこともできて大満足だ。
「うぅむ、じゃがのぅ……」
「これを機会に関わり方を考えてみろよ。周りもだいぶ、変わったんだろう?」
一度目のラグナロクの時とは、まったく状態が違うのだから。
本気の反逆が存在しない、緩い空気でこの世界は成り立っているようだし。
なのであまり気を張り詰めすぎて、これ以上のストレスを背負わなくてもいいだろう。
……どこかの王様と同じレベルは止めてもらいたいが、自由になるべきだ。
「ところでお主、その装置をいったいどこまで広めるつもりなんじゃ?」
「求める人が居る限り、どこまでも。別に、使ってくれてもいいんだぞ? 今回の活躍を見て、欲するところは欲してくれたからな」
どうやらこのラグナロク、北欧神話に関わる存在なら観れるように、何らかの術式で公開されているようだ……たしか星脈を介した情報ネットワークらしいな。
《そちらは神代の技術を用いた産物で、魔道具として存在します。星脈がインターネットの代わりになる、そのような認識で問題ありません》
最後のたとえは、俺が分かりやすいように咀嚼して提示してくれたみたいだ。
魔道具を使い、星にアクセスして情報をやり取りしている……のだろうか?
「そうではない。書き込みができるのは、あくまでもごく一部の魔道具のみじゃ。儂らはそれをルーンで再現し、閲覧用の魔道具で観れるようにした……といった感じかのぅ」
「……なんだ、分かっていたのか」
「儂は主神じゃからの。多少次元がズレていようと、しかと凝らせば視えてくるわい」
隻眼を指さし、そう語るオーディン。
……やれやれ、やっぱり食えない爺さんみたいだよ。
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