虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
ラグナロク その20
──『ヴィジョンアイ』。
オーディンに予測された通り、それは未来視を行える『プログレス』だ。
視界に成長度合いに応じた秒数分の未来が映り、相手の行動を先読みできる。
ちなみにタイプとしては、真の意味での未来視と分析タイプの両方を兼ね揃えていた。
どちらも使用可能なのだが、前者は精度が低く後者は表示されるパターンが多すぎる。
使用者がどちらの方向に成長させるのか、それが大きく変化に関わるようだ。
借りたこの『プログレス』の持ち主は、前者を選んでいる。
「未来なんて操れないさ。ただ、少しばかり視えるようになっただけだよ」
「ならば、先達としてちょいと教えてやろうではないか?」
「いや、遠慮しておく。それよりも、直接視せてくれよな!」
先読みを極限まで高めた果て、そこに存在するのが未来視だ。
彼らの戦い方はとても省エネで、当たる場所に置くというやり方を取っている。
相手が行動を中止できないタイミングを狙い、自身の攻撃をそこに置く。
事前に攻撃がどのように行われるか読まねばできないため、その難易度は高い。
だが、出来てしまえば後は楽。
自分の攻撃は吸い込まれるように相手に命中し、自分は相手の行動を知っているのだから回避でもカウンターでもやりたい放題。
オーディンも、そういうやり方で当初は参加者たちを屠っていた。
だからこそ、その動きからカウンターの挙動を予測して戦えるようになっている。
「お主の未来視は、儂と同じく行動からではなく起き得るであろう未来から読み取っているのじゃな。じゃが、得て間もないことが視ていて分かるぞ」
「……かもな。だが、今回それに負けることになるのは誰だろうな」
最適な行動は予測され、防がれる。
だが『偽・武神』の場合、そのカウンター行動すらも対処に含め、反撃できるように設定されていた。
まあ、限界もあるがそれは『SEBAS』が解析できなくなった時。
互いにカウンターのカウンターを選び、一撃をどう加えるかを狙っている。
「くっ……」
「ほれほれ、どうしたどうした? このままでは、槍が刺さってしまうぞ」
「分かっ、てる──『ブルームセンス』!」
狐魅童子の『プログレス』を起動し、俺の中に眠る潜在能力を開花させた。
正直ほとんど意味は無いが、少しでも補強する必要があったので起動する。
槍が刺さりそうだった所に、ほんの少しだけ高めた強化が加わった。
お陰でパワーバランスが崩れ、そこを狙い力を弱めることでブレが生じる。
槍を[モルメス]二本を上手く使い、逸らしながらオーディンへ近づく。
当然先読みされており、肘内を仕掛けてくるのでそれを喰らう。
「ぐふっ……捕まえたぞ」
「ほぉ……それが狙いか」
「未来が視えても、避けられない攻撃をすればいいだけの話だな」
「このような未来は、まだ見えなかったが。なるほど、まだ隠してあったわけだ」
そして、最後に使うのは『喰獣の牙』。
かつてオーディンが死んだ際、神狼であるフェンリルに喰い殺されたことをなぞり、この手段を選ぶ。
剣に加工する前の、純粋な獣の牙による死因を発動する。
その結果、俺とオーディンはどこからともなく現れた巨大な牙に──噛み砕かれた。
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