虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
ラグナロク その19
「──『偽・武神』」
戦闘データをさらに増やし、より真に迫ったであろう学習プログラム。
結界が最適な動きを俺に強要し、その身を砕きながらオーディンへ挑む。
《未来視への対策は済ませておりますが、まだ完全ではございません》
「……それにしても、対策ができているってのは凄いな」
先ほどまで使っていた槍は、神器とぶつけ合った影響で木っ端微塵だ。
なので壊れても問題ない、神器の域まで強化したモルメスで相手をする。
だいぶいろんな相手の魂を切ってきたからか、成長していたのだ。
昔は『死神の短剣』だったのに、今じゃ立派に『死招手刀[モルメス]』だしな。
「二本が最適か。うん、それじゃあ相手をしてもらおうか」
「ふぉっふぉ、遠慮はせんぞ」
「最初から、期待はしてないさ」
武技はいっさい使わない。
オーディンの未来視において、システムを利用した攻撃は完全に把握される……それが『SEBAS』の導き出した解だ。
つまり、武技や魔法などではそのすべてを知覚されてしまう。
ゼロから自分で編み上げ、完成させた攻撃のみがオーディンに届き得る。
とはいえ、未来を視ても対応しているのはオーディン自身。
俺のように無茶な動きで回避をしていないのは、すでに分かっている。
神族との戦闘データもだいぶ集まった今の状態なら──オーディンにも当てられる!
「ほぉ、やるではないか」
「このまま、進ませてもらう」
「そう上手く、世はできておらぬぞ」
オーディンがそう告げた直後、どこかに向けて槍を構えた。
隙だらけだ……なんて思ってはいけない、すぐに俺も対応を行う。
「──『リアクトミー』!」
「『■■■■■』……ふむ、強引に変えられたか。そのことが分かっていても、未来を変えられぬとは」
「ごふっ!」
狙った先に居たのは、仲間たちと共に戦っている真っ最中のアインヒルド。
彼女が死に、自分も死ねばそれがこのラグナロクにおいての退場となってしまう。
なので槍が放たれる直前、自身を強制的に知覚させられる『プログレス』を起動。
指定できる五感は一つのみ、今回は触覚を選んで誘き寄せた。
体を綺麗に槍が貫通し、すぐ『生者』で死に戻りを行い復活する。
彼女はまだ死んでいない、ついでに言えば今のでこちらへの注意をしてくれたはず。
「余計に殺しづらくなったんじゃないか?」
「なかなかに面白い。お主の能力の中に、未来を操る力でもあるのか?」
「……さて、どうだろうな」
実際、先読みだったり事前攻撃だったり、そういうものであれば存在する。
未来を変える手段はあっても、それがひどく難易度高めなだけ。
──それでも、やらないと勝てないのだ。
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