虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

ラグナロク その18



「アインヒルドが致死ダメージを受けた際、自動的に『ライフアライブ』が起動する。命の肩代わりが実行され、俺を殺す代わりにアインヒルドを生かす。反則? そもそもルールに縛られないのが『超越者』だろ」

「──ふむ、それがお前さんの答えか?」

「ちゃんと攻略法だってあるさ。俺とアインヒルド、双方を同時に倒せばいい。それともあれか、やっぱり倒せませんか?」

「ほっほっほ、言うてくれるではないか。この惨状を生みだした、新たな英雄よ」

 死屍累々、屍山血河。
 アインヒルドの戦いを見守る間、ひたすら敵を全自動で殺し続けた結果。

 ありとあらゆる存在は俺の前に平伏し、その命をこの場から消し去っていった。
 残ったのはその軌跡、大量に残された膨大な量の血液のみ。

 そう考えると別に屍は積み重なっていないので、山のごとしと言えないのか。
 なんて言う間もなく、この地に現れた老人ならぬ老神──オーディン。

 主神である彼がわざわざここに来たのは、もう残された参加者の数が少ないからだ。
 その手には神器であるグングニルが握られており、戦う気満々である。

「最期に、何か言い残すことは?」

「……上等」

「ふむ……ならばよい──『■■■■■グングニル』」

「──『貫通死の槍』」

 超高速で飛来する槍。
 投擲されたのではなく、槍自身に刻まれたルーン文字がその体を動かしている。

 俺はそれに合わせるように、死因を槍と化した武骨な槍を取りだす。
 結界と『プログレス』が体を操り、最適な挙動で相殺を行う。

 槍と槍とがぶつかり合い、辺りには激しい衝撃が飛ぶ。
 だが、これで終わりではない……彼の老神はまだ何もしていないのだから。

「がら空きじゃぞ──」

「そうでもないさ」

「むっ。完全に隙を狙ったと思うのじゃが」

「危なかったからな。命の危機に、生存本能が反応したのかもよっと」

 ガンガン警鐘を鳴らす死亡レーダーに従って、転移で飛んできたオーディンの拳を相殺する。

 こちらも結界で包まれており、次元の層を断つその強度で殴り返していた。
 だがオーディンはそんな拳を受けても、表情一つ変えずにルーン文字で傷を癒す。

「『生者』とは、かなり万能なんじゃな」

「かもしれないが、今は関係ないだろう? それとも会話が必要か」

「若い者はせっかちで困る。もっとゆっくり生きても良いじゃろうに」

「なら、そのこっそりと練っている術式も解除してくれよな──『千変宝珠・弾』」

 万物に変われる便利な魔力の球体を、無数の弾丸と化してオーディンに向かわせる。
 それは隠匿されていた術式を崩す、発動を阻害した。

 ……まったく、食えないお爺さんだよ。


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